飲食店の事業計画書の書き方 | 記載項目や作成のポイントを紹介
飲食店を開業するには当然ながら開業資金が必要ですが、自己資金だけでは難しいため、融資などで資金調達をする場合も多いでしょう。
日本政策金融公庫の創業融資は創業時に利用しやすいですが、申し込む際に事業計画書の提出が必要です。本記事では飲食店の事業計画書の作成方法や含めるべき要素を詳しく解説します。
目次
・事業計画書が必要な3つの理由
- ①事業プランを客観視するため
- ②創業期の融資を受けるため
- ③今後必要な資金が明確になるため
・飲食店の事業計画書を作成する際の4つのポイント
- ①返済の見通しを示す
- ②過去の経歴・実績をアピールする
- ③差別化要因を明確にする
- ④飲食店としての強みとコンセプトを明確にする
- ⑤5W2Hを活用して情報を伝える
・飲食店用の事業計画書に記載したい項目
- 創業の動機
- 経営者の略歴等
- 取扱商品・サービス
- 従業員
- 取引先・取引関係等
- 関連企業
- お借入の状況
- 必要な資金と調達方法
- 事業の見通し(月平均)
・事業計画書で開業する飲食店の強み事業コンセプトを明確にしよう
事業計画書が必要な3つの理由
①事業プランを客観視するため
事業計画書の作成は、単なる形式的な書類作りではなく、企業や組織のビジネスアイデアを具体化し、客観的に評価する重要な過程です。
この作業を通じて漠然としたアイデアが明確な形を持ち、その中で実現可能な事業プランへと進化していきます。
アイデアが具現化されることで、改善すべき部分や不足している部分を客観的に見つめなおすことができます。
②創業期の融資を受けるため
新規事業、特に飲食店の開業には相当な初期投資が必要になります。
多くの起業家にとって、この資金を自己資金だけでまかなうのは困難でしょう。
外部からの融資が不可欠となりますが、新規事業では実績がないため、通常の融資を受けることは容易ではありません。
ここで重要な役割を果たすのが創業融資であり、その獲得には綿密な事業計画書が欠かせません。
③今後必要な資金が明確になるため
飲食店の経営には、開業前から運営段階に至るまで、様々な資金が必要です。
事業計画書を作成する過程で、これらの必要資金を詳細に洗い出し、適切な資金計画を立てることができます。
これにより、自店舗の将来像や目標が明確になり、より堅実な経営の基盤を築くことが可能となります。
飲食店の事業計画書を作成する際の4つのポイント
①返済の見通しを示す
金融機関の融資審査は、安定した返済が見込めるかを軸に判断されます。
創業融資の審査に通過するためには、しっかり利益を出し融資を返済していく能力があることを示さなくてはいけません。
料理の腕前や実績だけでなく、売上とコストを根拠付けて説明することで、返済能力をアピールすることが重要です。
また、集客が見込める立地であること等も、アピールポイントの一つになるでしょう。
机上の空論で計画書を作成するのではなく、経費や立地、運営方針などの要素から数字を算出して、達成可能な目標を記載するようにします。
②過去の経歴・実績をアピールする
事業が成功する根拠になるような過去の経歴や実績をアピールすることも大切です。
開業経験がない場合は実績としてアピールできるものがなく、経営が成り立つ根拠も示しにくいでしょう。
そのような場合は、これまでの料理人としての実績をアピールしてください。過去の勤務先などを列挙し、確かな腕を持つことを客観的に記載しましょう。
③差別化要因を明確にする
飲食店経営はライバルの多い業界です。繁盛する店舗も多いですが、ライバルに負けてしまい店をたたまざるを得ないケースも少なくありません。
ライバルとの差別化要因を明確にして、十分に売上・利益が出る仕組みを示しましょう。
たとえば、価格やサービスなど、周辺店舗と比較してアピールできるポイントを記載します。
ライバルの調査を十分に行い、根拠のある数字・内容を記載してください。
④飲食店としての強みとコンセプトを明確にする
飲食業界は競争が激しく、多くの選択肢が溢れる市場です。このような環境で成功を収めるためには、自店舗の独自性を明確に打ち出すことが不可欠です。
事業計画書に飲食店の強みやコンセプトを明確に記載することは、単なる形式的な作業ではなく、ビジネスの根幹を形成する重要なステップです。
⑤5W2Hを活用して情報を伝える
事業計画書の作成において、5W2Hフレームワークは情報を体系的に整理し、効果的に伝えるための強力なツールです。
このフレームワークを活用することで、飲食店の事業計画を明確かつ具体的に表現することができます。
5W2Hは、下記の画像で示す要素で構成されています。
Who(誰が) | ターゲット顧客や従業員 |
What(何を) | 提供する料理やサービス |
When(いつ) | 営業時間や繁忙期 |
Where(どこで) | 店舗の立地や雰囲気 |
Why(なぜ) | 事業の目的や顧客のニーズ |
How(どのように) | サービス提供の方法や運営方針 |
How much(いくらで) | 価格設定や必要な投資額 |
これらの要素を事業計画書に適用することで、飲食店の全体像を簡潔かつ包括的に示すことができます。
飲食店用事業計画書の書き方
ここからは、具体的に日本政策金融公庫の創業計画書の書き方について解説します。
日本政策金融公庫のホームページ上に事業計画書のテンプレートが公開されており、ダウンロードすることができます。
創業の動機
最初の項目は「創業の動機」です。創業に至った経緯や動機を詳しく記載してください。この項目では、思いつきではなく計画的に創業しているかどうかがチェックされます。
自身の実績ともリンクさせ、開業を入念に計画してきたことを説明しましょう。
経営者の略歴等
2番目の項目は、「経営者の略歴等」です。
自身の職歴などを記載する項目ですが、最大6行しか記載できないため、創業の動機でアピールしたポイントと整合性が取れる学歴・職歴を記載してください。
勤務先での役職や実績、表彰歴などアピールできるポイントは積極的に記載します。また、店長など経営に携わった経歴があるなら、融資担当者に好印象を与えやすくなります。
その他にも、過去の事業経験、資格、知的財産(特許権や商標権など)などもアピールポイントになるので、正直に記載しましょう。
取扱商品・サービス
「取扱商品・サービス」の項目では、開業する予定の店舗で提供する主要なメニューと価格帯を記載します。
記載したメニューが売上に占める比率を予想し、売上シェアの欄に記入しましょう。
「セールスポイント」の欄に競合との差別化要因を記載します。
可能な限り、創業の動機や経歴と一貫性のある自社の強みを記載してください。
「販売ターゲット・販売戦略」の欄には、来店を狙う顧客像と、どのように顧客に来店してもらうかの戦略を記載します。
奇をてらった戦略を記載する必要はなく、堅実に売上が見込める戦略を記載してください。
「競合・市場など企業を取り巻く状況」の欄には、出店するエリアにどのようなライバル店舗があるのか、どれくらい顧客数が見込めるのかなど市場環境について記載します。
従業員
次は「従業員」に関してです。
創業時に予定している従業員数や、家族従業員、パート従業員の人数について記載します。
取引先・取引関係等
「取引先・取引関係等」の項目では、販売先や仕入先について詳しく記載します。
飲食店の場合は基本的に、販売先は一般個人、「シェア」は100%、「掛取引の割合」は0%、「回収・支払の条件」は即日〆即日回収で記載することが一般的です。
また、予定されている仕入先や業務の外注先についても、それぞれのシェア・掛取引の割合、回収・支払の条件を記載してください。
スタッフや自身の人件費の支払については、締日と支払日、ボーナス月の3点を記入します。
関連企業
他に関連する企業があれば記載します。
お借入の状況
今回申請する創業融資とは別にローンを利用している場合は、借入状況についても記載します。
返済能力を調べるために必要なことなので、事業とは直接関係ない創業者の個人的な住宅ローンなども正直に申告しましょう。
なお、借入状況に関しては、信用情報機関を通じて金融機関側から調べることができます。正しい情報を記載しないと審査に響くので、必ず正直に申告してください。
必要な資金と調達方法
次は「必要な資金と調達方法」の部分です。借入が必要な金額と理由を記載しましょう。
その左側に必要な資金、右側に調達方法を記入します。その際は必ず、表の左側と右側の合計が同額になるようにしてください。
設備資金
店舗や車両、設備等の固定資産に投資する資金は、「設備資金」の欄に記入します。
資金関係の項目では、想定金額ではなく、専門業者等に見積もってもらった金額を記入しなくてはなりません。
起業直後に購入するものをすべて見積り、根拠のある数字を記載しましょう。
運転資金
事業が安定するまでに必要な資金のうち、設備資金に該当しないものを「運転資金」の欄に記入します。
事業の見通し欄と整合するように確認しながら記載しましょう。
なお、3ヶ月分程度の運転資金額が審査通過する融資限度額の目安になります。
調達の方法
「調達の方法」の欄には、資金の調達方法を記載します。以下の4項目に分けて記載します。
- 自己資金
- 親、兄弟、知人、友人等からの借入
- 日本政策金融公庫 国民生活事業からの借入
- 他の金融機関等からの借入
自己資金が総事業費の10分の1以上あることが融資の最低条件ですが、実際のところ、10分の1では審査を通らないことが多いです。
自己資金が総事業費の3分の1以上あることが望ましいとされています。
事業の見通し(月平均)
最後の項目は「事業の見通し」です。
売上高と仕入高、経費(人件費、家賃、支払利息、その他)について詳しく記載しましょう。
飲食店の売上はさまざまな要因に左右されます。基本的には、客数×客単価で求めます。
客単価は商品単価と注文点数、客数は新規客とリピーターに分解して設定します。
店舗の席数や回転率も加味し、さらに季節要因、平日と土日、ランチとディナーなどに分けて精度を高める必要があります。
さまざまな要因をシミュレーションした上で、現実的で無理のない見通しを記載してください。
事業計画書で開業する飲食店の強み事業コンセプトを明確にしよう
飲食店の事業計画書作成において、強みと事業コンセプトの明確化は成功への重要な鍵となります。
ご紹介した5W2Hのフレームワーク等をを活用して具体的な計画を立てると共に、自社独自の価値提案を明確に示すことで、競争の激しい市場での差別化が可能になります。
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