事業計画及び成長可能性に関する事項とは?作り方やデザインのコツについて解説
グロース市場に上場している企業にとって「事業計画及び成長可能性に関する事項」の作成は、極めて重要です。
この資料には、投資家に自社の事業モデルと将来性を効果的に伝える役割があります。しかし「事業計画及び成長可能性に関する事項」の作成に苦心しているIR担当者の方は、多いのではないでしょうか。
本記事では、900社以上の資料作成に携わった弊社ストリームラインが、事業計画及び成長可能性に関する事項の作り方を、わかりやすく解説します。
投資家の信頼を獲得し、企業価値を適切に伝えるためのポイントをわかりやすく解説するので、ぜひ最後までお読みください。
事業計画及び成長可能性に関する事項とは
「事業計画及び成長可能性に関する事項」とは、グロース市場に上場している企業において開示が求められている資料です。上場企業のビジネスモデルや競争優位性・成長可能性の理解に役立つ情報を提供することが目的です。
本資料には具体的な事業計画や市場規模など、投資判断に重要なポイントを盛り込む必要があります。そのため、投資家にとって上場企業の成長戦略や競争力・リスクなどを理解するうえで非常に有用な情報源と言えるでしょう。
また「事業計画及び成長可能性に関する事項」は、最低でも年1回、事業年度終了後3か月以内に最新の進捗状況を反映した内容を開示することが求められます。事業計画や事業内容に大幅な変更がある場合は、速やかに開示する必要がある点に注意しましょう。
なお、弊社ストリームラインでは、資料制作のご依頼を承っています。IR資料の作成についてお困りの方は資料作成のワンストップ代行サービス「LEAD」までお気軽にご相談ください。
事業計画及び成長可能性に関する事項の作り方を要素別に解説
ここでは、事業計画及び成長可能性に関する事項の作り方について、要素別に詳しく解説します。
- 1. ビジネスモデル
- 2. 市場環境
- 3. 競争力の源泉
- 4. 事業計画
- 5. リスク情報
なお、見本となる「事業計画及び成長可能性に関する事項」の事例については、以下の記事で紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
▶ 参考にしたい事業計画及び成長可能性に関する事項まとめ6選!
1.ビジネスモデル
ビジネスモデルに掲載すべき項目としては、以下の2点があります。
- 事業の内容
- 事業の収益構造
まず、事業の内容を説明し、産業全体における自社の位置づけを明確にしましょう。専門用語は避け、一般の投資家にもわかりやすい言葉で記述することも大切です。
製品やサービスの特徴を説明する際は、各々が解決する顧客ニーズと収益の仕組みを具体的に示します。複数事業を展開している場合は、各事業の業績貢献度を売上高や利益の構成比で表現するとわかりやすくなるでしょう。
収益モデルの解説では、主要な収入源と費用構造を明確にします。変動の大きい費用項目については、その推移や事業特性との関連を説明しましょう。
加えて、将来展望も重要です。産業全体の成長と自社の成長の関連性・将来的な事業構成や収益構造の変化について具体的に記載します。先行投資型企業の場合は、とくに詳細な将来見通しが求められるでしょう。
このような要素を組み合わせることで、投資家に自社のビジネスモデルと成長可能性を効果的に伝えられます。
2. 市場環境
市場環境に掲載すべきポイントは、以下の2点です。
- 市場規模
- 競合環境
ターゲット市場の具体的な内容と規模を、信頼性の高いデータを用いて明確に示します。Total Addressable Market (TAM)の概念を活用し、実際にアクセス可能な市場を具体的に提示することで、事業機会をより明確に伝えられるでしょう。
TAMとは → 事業(商品やサービス)が獲得できる可能性のある市場規模
市場の成長や変化が見込まれる場合は、市場動向に対する自社の認識と戦略を明記します。過去の実績と比較しながら、自社の成長が市場の成長とどのように連動しているかを説明すると伝わりやすくなります。
新興市場や変化の激しい業界でも、現時点での市場の将来予測を示しましょう。
また、競合環境については、主要な製品・サービスごとに状況を詳細に記述します。自社のポジショニングやシェアを明確に示し、競合との違いや強みをアピールしましょう。具体的な社名を挙げるのが難しい場合でも、どのような企業を競合として意識しているかを記載し、比較することで自社の特徴を浮き彫りにできます。
3. 競争力の源泉
競争力の源泉に掲載する項目は「経営資源・競争優位性」です。競争力の要因となる自社の強みを具体的に挙げ、競争優位性にどのようにつながるかを説明しましょう。
自社の強みとしてアピールできる要素は、以下のとおりです。
- 技術
- 知的財産
- ビジネスモデル
- ノウハウ
- ブランド
- 人材 など
競合他社との差別化ポイントを客観的事実に基づいて明確にすることが大切です。
たとえば、高付加価値製品の提供や低コスト化の実現など、自社の強みを具体的に示すことなどが挙げられます。
競争優位性が業績にどのように貢献し、事業計画とどうつながるかを説明することで、投資家の理解を深められます。とくに、先行投資型企業の場合は差別化技術の詳細やポテンシャルを具体的に記述し、長期的な投資価値を訴求しましょう。
4. 事業計画
事業計画に掲載すべき項目は、以下の4点です。
- 成長戦略
- 経営指標
- 利益計画及び前提条件
- 進捗状況
まず、ビジネスモデルや市場環境・競争力の源泉を踏まえた成長戦略を明確に示します。具体的な施策を詳細に記述し、中長期のビジョンと目標に向けた成長ストーリーを魅力的に描くことが重要です。
次に、成長戦略の進捗を示す重要な経営指標(KPI)を設定します。ユーザー数や顧客獲得単価など、継続的に測定可能な指標を選び、目標値を明示します。KPIは時系列で推移を示し、業績との関係やトレンドが理解できるようにすることが大切です。
定期的な進捗状況の報告も欠かせません。計画と実績の差異が生じている場合は、その理由を丁寧に説明しましょう。抽象的な成長イメージだけでなく、現状の課題とその解決に向けた具体的な施策・期待される効果を示すことで説得力を高められます。
また、可能な限り定量的な記載を心がけることで、投資家が進捗を確認しやすくします。説明なくKPIを非開示にしたり、KPIの見せ方を変えたりすると、投資家に不信感を与える恐れがあるので避けましょう。
KPIを継続的に開示し、変更する場合はその理由を説明することが大切です。開示する情報に一貫性を持たせることで、投資家からの信頼獲得につながります。
なお、事業計画書の作成例については、こちらの記事も参考にしてみてください。
▶ 【実例解説】事業計画書の作成例3選|おさえるべきポイント3点!
5. リスク情報
リスク情報には、以下の2点を掲載します。
- 認識するリスク
- リスク対応策
リスク情報の開示は、投資家の信頼獲得に不可欠です。成長実現や事業計画遂行に重大な影響を与えうるリスクに焦点を当て、その顕在化の可能性と影響を具体的に示しましょう。
主要なリスクへの対応策は、経営方針や成長戦略との関連性を踏まえて説明します。
考えられるすべてのリスクを羅列するのではなく、自社の状況に応じたリスクとその対策をわかりやすく記載することが重要です。
前回の更新時のリスク記載を変更する場合は、その理由を明記することも大切です。また、新たなリスクの出現や既存リスクの重要性変化には、タイムリーな情報更新が求められる点も押さえておきましょう。
なお、弊社ストリームラインでは、資料制作のご依頼を承っています。IR資料の作成についてお困りの方は資料作成のワンストップ代行サービス「LEAD」までお気軽にご相談ください。
事業計画及び成長可能性に関する説明資料を作る際のデザインのポイント
事業計画及び成長可能性に関する説明資料を作成する際のデザインポイントについて、5つ紹介します。
- 1. デザインに一貫性を持たせる
- 2. 余白を活用する
- 3. グラフをカスタマイズする
- 4. 色使いを抑える
- 5. 1スライド1メッセージを意識する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. デザインに一貫性を持たせる
説明資料全体を通して、デザイン要素の一貫性を保つことが重要です。フォントや配色・レイアウトなどを統一することで、プロフェッショナルな印象を与え、会社としての信頼性を高められます。
注意すべき点は以下のとおりです。
フォント | 見出しと本文で使用するフォントを決め、サイズや太さも統一する |
配色 | 企業カラーを基調とし、アクセントカラーを効果的に使用する |
レイアウト | 各ページの構成を似たパターンで統一する |
ロゴ | 会社ロゴの配置や大きさを揃える |
図表のスタイル | グラフや表の色使いやデザインを統一する |
このようなポイントを徹底することで、読みやすい資料になります。
なお、フォントの選び方について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
▶ パワーポイント資料に最適なフォント6選|選び方から一括設定の方法までまとめて解説
2. 余白を活用する
適切に余白を活用することは、読みやすい資料を作成するうえで非常に重要です。余白活用のポイントは以下のとおりです。
ページ余白 | 上下左右に十分なスペースを設ける例:上下20mm、左右15mm程度 |
段落間 | 適度な行間を設定し、文章のまとまりを明確にする |
セクション間 | 関連する情報のグループ化と、異なる内容の区別を余白で表現する |
図表周り | 図表の周囲に十分な余白を設け、テキストとの境界を明確にする |
テキストボックス | 重要な情報を強調する際、周囲に余白を設けて目立たせる |
各ページの余白を厳密に揃えることで、さらに統一感のある資料を作成できます。ただし、情報量とのバランスを取ることも大切です。余白を活用しつつ、必要な情報をしっかりと伝えられるよう工夫しましょう。
3. グラフをカスタマイズする
グラフは複雑な数値情報を視覚的に伝える強力なツールです。デフォルトのまま使用するのではなく、カスタマイズすることで、資料の質を一段と高められます。
カスタマイズするポイントは、こちらです。
タイトル | グラフの内容を端的に表すタイトルをテキストボックスで追加する |
軸の調整 | 目盛り線や縦軸の数値を最小限にし、見やすさを向上させる |
色使い | 強調したい箇所にメインカラーやアクセントカラーを使用する |
データラベル | 重要な数値を大きなテキストボックスで挿入し、視認性を高める |
凡例 | 必要最小限の情報に絞り、グラフ内に配置して見やすくする |
また、グラフの種類(棒グラフ、折れ線グラフなど)を適切に選択し、データの特性を最も効果的に表現することも重要です。シンプルで分かりやすいグラフデザインを心がけ、複雑な情報も一目で伝えられるよう工夫しましょう。
グラフの作成方法についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください
▶ パワーポイントでグラフを作成する方法!種類・作成のコツ・テンプレート化の方法をまとめて解説【作業効率化】
4. 色使いを抑える
効果的な説明資料では、色使いを抑えることが重要です。2〜3色程度の限られた色を使用することで、全体的な統一感を演出し、読みやすい文書ができあがります。
配色において意識すべきポイントは、以下のとおりです。
アクセントカラー | 1〜2色を選び、重要な情報の強調に使用する |
企業カラー | 可能であれば、企業のブランドカラーを取り入れる |
コントラスト | 背景と文字のコントラストを適切に保ち、可読性を高める |
一貫性 | 選んだ色使いを資料全体で統一する |
シンプルな色使いで、洗練された印象を与えつつ、重要な情報を効果的に強調できるよう心がけましょう。過度に多くの色を使用すると視認性が低下し、情報の伝達効率が落ちる恐れがあります。
資料の配色について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
▶パワポ資料の配色はこれで決まり!カラーコードの組み合わせや便利なサイトも紹介
5. 1スライド1メッセージを意識する
説明資料の各スライドには、1つの主要なメッセージのみを記載することが効果的です。伝えるべきことを厳選すれば、聞き手の注目を適切に誘導し内容の理解を促進できます。
1スライド1メッセージのポイントは、以下のとおりです。
焦点の明確化 | 各スライドで伝えたい核心を1つに絞る |
構造化 | 「理想」「課題」「解決策」など、テーマごとにスライドを分ける |
視覚的階層 | 主要メッセージを目立たせ、補足情報は控えめに配置する |
簡潔さ | 不要な情報は省き、エッセンスのみを記載する |
このようなポイントを意識することで、聞き手は各スライドの要点をかんたんに把握でき、プレゼンテーション全体の理解度が向上するでしょう。
ポイントを押さえて魅力的な事業計画及び成長可能性に関する事項を作りましょう
「事業計画及び成長可能性に関する事項」は、投資家との信頼関係を構築するために重要な役割を果たします。ビジネスモデルや市場環境・競争力の源泉などを明確に示し、具体的な成長戦略と経営指標を提示することが大切です。リスク情報も適切に開示し、透明性を確保しましょう。
自社の強みと成長ポテンシャルを効果的に伝える資料を作成することで、投資家の信頼と期待を獲得できるはずです。
なお、弊社ストリームラインでは、資料制作のご依頼を承っています。IR資料の作成についてお困りの方は資料作成のワンストップ代行サービス「LEAD」までお気軽にご相談ください。