新規事業テーマ選定や事業計画書作成のポイントをご紹介!
本記事では、新規事業テーマの選定方法について詳細に解説します。
事業の規模感や収益構造、関連性を考慮し、市場や技術の視点から戦略的なテーマ選定の重要性を探ります。
この記事を参考に、競争優位性ある事業を成功に導くための実践的なアプローチを学びましょう。
新規事業の事業計画におけるテーマの重要性
新規事業の事業計画におけるテーマの重要性は、その事業の方向性と成功の可能性を大きく左右する点にあります。
明確なテーマ設定により、市場ニーズや競争環境を意識した戦略が立てやすくなります。
また、チーム全体が共通の目標に向かって取り組むことで、効率的なリソースの活用が可能になります。
したがって、事業計画の初期段階でのテーマの選定は、成功への重要なステップとなります。
新規事業テーマの決め方
①事業の規模感
新たに手掛ける事業ではどれくらいの売上が必要でしょうか。新規事業への投資額はどこまで許容可能でしょうか。
事業の種類によって、一定期間内で実現できる売上規模や発生するコストは違ってきます。
売上規模は市場の規模や競争の激しさに制限されますし、投資に回せる金額が少ない場合もあります。
新規事業の検討において、ハイリスクハイリターンに挑むのか、ローリスクローリターンを目指すのか、事業の規模感を想定しておくことは非常に大切です。
中長期の経営目標が明確な場合は、既存事業の伸びしろを踏まえて逆算すれば、自然と新規事業が目指すべき規模感が見えてきます。
これはそれぞれの企業の考え方でしかなく、正解はありません。100億円が狙えなければ検討の土台に乗らない大企業もあれば、1億円でも十分な会社もあります。
いずれにしても、事業の規模感によって検討する内容が変わってきますので、経営方針を踏まえた前提を設定するようにしてください。
売上の規模感は、市場規模と競争状況から想定することが可能です。現在の市場規模と成長率がわかれば、将来の市場規模をある程度予測することができます。
業界内の企業の売上規模がわかれば、現実的な売上のラインが見えてきます。
確かなデータを入手できなくても、仮定の数字を積み上げて必ず想定するようにしてください。
②事業の収益構造
新規事業を検討する際には、収益性を左右する事業間の構造的な違いに配慮することも必要です。
事業の収益性は内外の様々な要因に規定されて決まりますが、それぞれの事業が普遍的に持つ構造特性に規定される部分も大きなものです。
テーマを設定する際の2つ目の基準は事業の収益構造です。
ここでは、事業間の構造的な違いの代表例を2パターン見ていきます。
労働集約型産業と資本集約型産業
労働集約型産業 | 資本集約型産業 |
一人当たりの資本投下額が小さく、事業活動における労働力への依存度が高い産業 | 一人当たりの資本投下額が大きく、事業活動における設備資本への依存度が高い産業 |
例)飲食業、農業、介護事業等 | 例)製造業、航空事業、金融業等 |
参入障壁「低」:競争の煽りを受けやすい | 参入障壁「高」:高収益を実現しやすい |
重要なポイントは、参入障壁の高さと規模の経済性です。
資本投下が必要であるため、資本集約型産業の方が参入障壁は高く、リスクも高い傾向にあります。
一方、高い参入障壁が競争を抑える働きをするため、事業が軌道に乗った際には資本集約型産業の方が高収益を実現しやすいという側面があります。
労働集約型産業は、参入が比較的容易い分、競争の煽りを受けやすいのです。
また、資本集約型産業は規模の経済の利益を享受できるという特徴を持っています。
資本集約型産業は設備資本が主体となって収益を生み出す構造であるため、販売規模が拡大すればするほど、一定期間における単位当たりコストが低下していきます。これを規模の経済性と呼びます。
資本集約型産業は規模の拡大に伴うコスト競争力の向上により、事業の収益性を高めることができるのです。
一方、労働集約型産業は売上に占める労務費の割合が高く、売上の拡大に比例して固定費も増大していくため、規模の経済性が働きません。
将来の収益性を目指してリスクを取るのか、将来の収益性を捨てて目先の利益に走るのか、経営方針を踏まえた選択が求められます。
フロー型ビジネスとストック型ビジネス
フロー型ビジネス | ストック型ビジネス |
・都度単発の取引をして収益を上げていくモデル ・収益の増減が激しい事業 ・比較的すぐに収益を上げることができる | ・定期的な収益を蓄積していくモデル ・収益が比較的安定しやすい事業 ・顧客の蓄積に時間がかかる |
例)飲食業、小売業、建設業等 | 例)通信業、電力事業、不動産賃貸業等 |
先程のパターンはコスト構造を主眼に置いた違いでしたが、こちらは収益モデルの違いになります。
フロー型ビジネスは比較的すぐに収益を上げることができますが、ストック型ビジネスは顧客の蓄積に時間を要します。
安定させるまでに時間やコストを要するものの、ストック型ビジネスは蓄積型であるため、損益分岐点を超えた後は安定した収益が見込めます。
それぞれ一長一短があり、どちらが良いというものではありません。テーマを設定する際には、どのような収益構造の事業が必要かを考えるようにしてください。
③事業の関連性
テーマを設定する際の3つ目の基準は事業の関連性です。新規事業を検討する際に、既存事業との関連を無視することはできません。
新規事業の内容によっては、既存事業に対してもプラスの効果をもたらすことがあります。
それを事業シナジー(事業間の相乗効果)と呼びます。
逆に、新規事業が既存事業の収益を奪うケースもあり、それをカニバリゼーション(事業の食い合い)と呼びます。
既存事業にどのような影響を及ぼす新規事業に取り組むべきか、既存事業のどんな資産を新規事業に活用すべきなのか、テーマを設定する際には既存事業との関連性を考慮することが重要です。
新規事業のテーマを検討するということは、経営の事業ポートフォリオを構想することとイコールなのです。
新規事業テーマを選択する際の悩みとその解決策
選択したテーマより魅力的なテーマがあると考えてしまう
新規事業を選ぶ際に、選んだテーマよりも魅力的なテーマが存在するのではないかと悩むことがあります。これを「青い鳥症候群」と呼びます。
魅力的なアイデアを追求するあまり、時間や資源を無駄にしてしまうことも少なくありません。
この悩みを解決するためには、選択したテーマに対する姿勢を見直すことが重要です。目の前のテーマに一定以上の魅力があれば、それに取り組むべきです。
新規事業のテーマ設定はトーナメント方式ではなく、「足切り」の視点で考えましょう。
つまり、一定の基準を満たすテーマを選び、それ以上の魅力を求めることは避けるべきです。
さらに、新規事業はポートフォリオ投資のように捉えると良いでしょう。
複数のテーマを並行して進めることで、リスクを分散し、成功の可能性を高めることができます。
自社の強みを活かせるテーマで進めるべきなのか決めきれない
新規事業を検討する際、自社の強みを活かせるテーマを選ぶべきかどうかは、検討の段階によって異なります。
初期段階では、「どの方向に進むか」という選択が重要であり、強みを強く意識する必要はありません。
最終的には、強みは作り出すものであるため、自社の強みを過度に意識しない方が良いでしょう。実際、「本当に強みが生かせる領域」はほとんど残されていないのが現実です。
そうした領域は、新規事業というよりも顧客開発や新商品開発に該当します。新たに事業を立ち上げたいのであれば、投資を通じてNo.1の地位を目指す考え方が現実的です。
新規事業テーマの事業計画書の作り方
フレームワークを活用する
新規事業のアイデアやテーマを考える際に、上手く進められないという声をよく耳にします。
その際は、フレームワークを活用することで、より効率的に思考を整理し、具体的なアイデアを導き出すことが可能となるかもしれません。
最も広く使用されるのは、アンゾフの成長マトリクスです。
このフレームワークでは、縦軸に市場(既存市場と新規市場)、横軸に製品(既存製品と新規製品)を配置し、それぞれの組み合わせを検討することで、新たな事業機会を特定します。
これにより、自社の強みや市場のニーズに基づいた具体的な事業テーマを明確にすることができます。
①市場浸透
市場浸透とは、既存事業が担当する既存市場において、既存製品の販売を拡大し、シェアを増加させる戦略です。
多くの日本の大企業は、この市場浸透において、現在の柱となっている製品を日本市場でさらに拡大することが困難であるという現実に直面しています。
この難しさが、新規事業を模索する要因となっているのです。
②新市場開拓
新市場開拓の基本的な考え方は、現在の製品を他の市場に展開することです。
たとえば、これまで消費者向けに販売していた製品を企業向けに材料として提供したり、飛行機で使用していた部品を自動車向けに転用したりする事例が挙げられます。
このアプローチでは、新たな顧客層に販売することになるため、市場調査が極めて重要となります。
新規事業として新市場開拓を行う場合、VOC(Voice of Customer:顧客の声)をいかに収集し、分析するかが成否を分ける鍵となります。
顧客のニーズや期待を正確に把握することで、新市場での成功の可能性が高まります。
③新製品開発
新製品開発は、既存市場の顧客に新たな製品を提供するために、ゼロから製品を開発するプロセスです。
これは、いわゆる「クロスセル」と同様の考え方ですが、ここでは新たに製品を創出することを前提としています。
新製品の開発に際しては、自社での開発に加え、他社からの調達も選択肢として考慮することができます。
新製品開発には、大きく二つの意味合いがあります。
一つは「既存顧客の既存のニーズの延長線上」に位置づけられるもので、もう一つは「既存顧客の新たなニーズの充足」です。
前者の例として、現在の電子製品や自動車に広く採用されているリチウムイオン電池が挙げられます。電池の容量の増強や小型化は、業界全体において重要な課題です。
もし、既存の技術を超える新手法、たとえばリチウムイオン以外の化合物を利用した開発に成功すれば、莫大な利益を生む可能性があります。
一方の後者は、新規事業開発の重要な側面として位置づけられます。
つまり、既存の顧客が気付いていなかった新たなニーズを発見し、その課題を解決することが求められています。
このためにも、顧客を深く理解するためのVOC(Voice of Customer:顧客の声)の収集が重要です。
④多角化
多角化は、全く異なる分野に進出する戦略を指します。
一般に「新規事業」と言われる際には、この多角化が想起されることが多いですが、成功確率が低い点にも注意が必要です。
戦略的なテーマ選定とフレームワークの活用で新規事業を成功へ導こう
新規事業の成功には、戦略的なテーマ選定と適切なフレームワークの活用が不可欠です。
事業の規模感、収益構造、関連性を考慮しながら、強みを活かしたテーマを選びましょう。
選択したテーマの魅力を最大化するために、フレームワークを駆使して計画を具体化し、実行に移すことが重要になります。
これにより、持続可能な成長を実現することができます。
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