【プロの伝わる資料作成術】ピッチ資料の基本構成9要素・作り方を解説!
イベントや打ち合わせで使用するピッチ資料。短時間でのプレゼンの成果が資金調達などの成果に直結します。今回はスタートアップ経営者による資金調達を目的としたピッチ資料にフォーカスし、作成の流れや基本の構成を解説します。
ピッチ資料とは
ピッチとは
ピッチとは、スタートアップが投資家などに自社やサービスを紹介するための短いプレゼンテーションのことです。プレゼンテーションよりもカジュアルな意味合いがあり、IT業界の中心地であるシリコンバレー由来で、スタートアップ界隈を中心に使用されています。
ベンチャーカンファレンスなど不特定多数の聞き手を対象にプレゼンテーションを行う場合も多いです。そのため、共感のしやすさや簡潔に伝えられるかどうかが重視されます。1枚のスライドは30秒から1分間、少し時間に余裕のある発表の場合ならば1枚2〜4分間程度にまとめるとよいでしょう。
ピッチ資料の主な目的
自社のビジネスに興味と理解を得て、投資などの行動をしてもらうことがピッチ資料の主な目的です。ピッチ資料を作成することで、ビジネスモデルや事業戦略がブラッシュアップされる効果もあります。また、投資以外にも採用を目的としてピッチ資料を使用することもあります。(内部リンク「採用ピッチ資料」)
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ピッチ資料の作成手順
①目的を明確にする
まずは、ピッチ資料を用いて何を達成したいのかを明確にします。資料の目的を定めるにあたり重要なことは、誰に、どのような行動をとってほしいかの2点を決めることです。
誰からいくら資金を調達したいのか、どのような人材にジョインしてほしいのかなど、最終ゴールを明らかにしましょう。
②構成を検討する
いきなりスライドを作成するのではなく、まずは全体の構成を考えることから始めます。
目的に沿っているかを意識しながら、まずは手書きやワードなどで構成を考えていきます。スライドの作り込みから始めると、目的から逸脱した資料になってしまい、作り込んだ後に大幅に修正することがあるからです。
目次レベルで見出しを検討し、内容の抜け漏れはないか、順序は適切かどうか、説得力のある根拠付はできているかなどの視点で十分に確認してください。
③ストーリーを組み立てる
短時間で共感を得るためにも、ストーリーを意識することを忘れてはいけません。3分程度の短い時間で印象に残すためには、ストーリーをきちんと作り込む必要があります。
「なぜその課題を解決する必要があるのか」「なぜ今解決しなければならないのか」「なぜ自分たちがやるのか」について、根拠をもとにストーリーに落とし込みましょう。
④デザインを設計する
シンプルで伝わりやすいデザインは視覚的に理解を助けてくれます。期待する結果を高める武器になるでしょう。内容が重要なことは言うまでもありませんが、デザインもピッチ資料の重要な要素です。短時間でしっかり内容を伝えるためには、わかりやすいシンプルなデザインを心がけましょう。
ピッチ資料の基本構成9要素
ピッチ資料の基本的な構成を解説します。
①表紙
まずは表紙ページでピッチ資料の概要・全体像を伝えます。ピッチのタイトルと企業ロゴ、事業に関連する写真などを入れることで、どのような内容かを伝えることができます。
②顧客の課題
解決しようとしている課題は何か、その課題をどのような顧客が抱いているのか、なぜ解決すべきなのかを説明します。課題の深刻さや、それを解決したときのインパクトなどを語り、共感を得ましょう。
また、なぜ自分がその課題に詳しいのか、関心を持っているかについても、原体験などと絡めながら説明できれば、説得力が高まります。
③解決策
次に、課題に対する解決策を説明します。どのように課題を解決するのか、さまざまな解決策がある中でなぜその策なのかを提示します。サービスのプロトタイプなどがあれば、写真や動画で視覚的に示すことで、解決策がよりイメージしやすくなります。シード期の資金調達を狙う場合は、まずは短期的な解決策を提示しましょう。
④トラクション
トランクションとは、どれだけの顧客を引っ張り、成長できるかということです。つまり、ビジネスの成長の可能性を示す実績があるかどうかを説明します。
トラクションは売上やユーザー数の推移、LTV(ライフタイムバリュー)、成長率、サービス継続率など既存の実績を基に定量的に示します。実際にユーザーに受け入れられ、成長が見込めることが分かるデータを提示するのがポイントです。実績が用意できていないシード期の場合は、仮説や試算の精度の高さを示してください。
⑤市場規模
市場規模、およびそこから想定される売上などを解説します。
市場規模はスタートアップの成長ポテンシャルを測る上で必要不可欠な要素です。投資家がアップサイドの大きさに惹かれるような市場規模を示す必要があります。とはいえ、最初は小規模な市場にフォーカスしていくことになるため、獲得可能性のある大きな市場規模と、実際にサービスを提供し主戦場とする市場規模の両方を示しましょう。
前者はTAM(Total Available Market)、後者はSAM(Serviceable Addressable Market)と言います。最初はどの市場を狙い、どのような順番でスケールさせていくかを論理的に語り、投資家に力を感じさせましょう。
⑥競合のリストアップ
競合をリストアップし、特徴を説明します。
競合との差別化要因、自社ならではの優位性を明確にするために、縦軸と横軸をとったポジショニングマップを使用して図示すると伝わりやすいです。
ビジネスモデルの独自性や、経営者やチームメンバーの経歴なども含め、自社のUSP(Unique Selling Proposition;自社ならではの強み)を伝えられるようにしましょう。
⑦ビジネスモデル
ビジネスモデルのページでは、どのように収益を得るのかを明らかにすることが重要です。どのタイミングで、誰から、どれほどの売上が出るのかを説明します。サービス・情報・お金の流れが複雑な場合は、図解すると伝わりやすくなります。
売り上げが立つ前であっても、可能なかぎり現実的な数値を算定します。
⑧チーム
ここまで説明してきたビジネスを、どのような体制で行うかを紹介します。チームメンバーを紹介し、なぜこのチームで達成できるかを伝えるのがポイントです。
このビジネスで顧客の課題を解決でき、他の競合に勝てる理由を体制面からアピールしましょう。事業と関連のあるメンバーの前職の経歴や実績、学歴などを掲載しましょう。
⑨資金調達計画と使い方
必要な金額規模や用途を詳しく説明するページです。企業価値バリュエーション、株式の放出割合、資金調達スキーム、株式会社の種類、資金の投下期間なども記載すると良いです。
具体的な数値を出して、その資金を使って得る資源や成果を定義します。聞き手が知りたい内容を想像しながら、事業のポイントをまとめていくことが重要です。