投資家を惹きつける魅力的なエクイティストーリーの作り方を徹底解説
企業が投資家から資金を調達するためには、魅力的なエクイティストーリーが必須です。本記事では、エクイティストーリーの重要性、必要なタイミング、取り扱うべき5項目を中心に解説します。さらに記事の後半では、投資家を惹きつける魅力的なエクイティストーリーの作り方も徹底解説していきます。本記事を参考に魅力的なエクイティストーリーを作っていきましょう。
エクイティストーリーについて
エクイティストーリーとは
エクイティストーリーとは、企業が投資家に向けて作成する自社の魅力をまとめたストーリーです。
具体的には、自社の強みや特徴、成長戦略などのテーマを取り扱います。金融業界では別名、「コーポレートストーリー」と呼ばれることもあります。
このエクイティストーリーを適切に構築して投資家とのコミュニケーションを繰り返すことで、自社の魅力を効果的に伝えることができます。その結果、投資家の理解と信頼を得て、円滑な資金調達が可能となります。
なぜ、エクイティストーリーが重要であるのか
エクイティストーリーは、企業が資金調達を行う上で非常に重要な役割を担います。なぜなら、このストーリーによって自社株式の価値が判断され、投資家が企業の成長戦略に納得できるかどうかが左右されてしまうためです。
つまり、資金調達を行う目的や使途、さらには将来の事業展開などを、エクイティストーリーを通じて明確に伝えられるかどうかが成功のカギとなります。
エクイティストーリーが必要なタイミングはいつか
エクイティストーリーが必要とされるタイミングは、主に以下の2つです。
スタートアップ企業が資金調達を行う時
例えばシード期、アーリー期、シリーズAラウンドなどの初期成長段階において、投資家から出資を募る際にエクイティストーリーが必要となります。
投資家に自社の事業の魅力と将来性をアピールし、資金を呼び込むためです。
上場(IPO)を控えた時
株式公開を目指す企業は、上場の2年程度前からエクイティストーリーが必要です。
IPO直前には投資家向けのプレゼンテーションが求められ、そこで企業の強みや成長戦略をエクイティストーリーに基づいて分かりやすく説明する必要があるためです。
エクイティストーリーで取り扱いたい5項目
①ビジネスモデル
ビジネスモデルの説明では、次の2点について明確に示す必要があります。
1.事業の内容
- 提供する製品やサービスの内容と特徴
- 複数事業がある場合は、それぞれの事業が全体に占める寄与度
- 事業展開に必要となる許認可の内容とプロセス
2.収益構造
- 収益と費用の内訳とその構造
- キャッシュフローを生み出すまでの流れ
- 収益構造に大きな影響を与える契約内容(条件など)
②市場環境
市場環境の説明では、次の2点について明確に示す必要があります。
1.市場規模
- 具体的な市場(顧客の種別、地域)の内容及び規模
2.競合環境
- 競合の内容
- 自社のポジショニング
- シェア
③競争力の源泉
競争力の源泉の説明では、技術・知的財産、ビジネスモデル、ノウハウ、ブランド、人材の主に5項目を明確に示す必要があります。
④事業計画
事業計画の説明では、次の4点について明確に示す必要があります。
1.成長戦略
- 経営方針・成長戦略
- それを実現するための具体的な施策
2.経営指標
- 経営上重視する指標
- 指標として採用する理由
- 実績値
- 具体的な目標値
3.利益計画及び前提条件
- 中期利益計画を公表している場合、その内容及び前提条件
4.進捗状況
- 前回記載事項の達成状況
- 前回記載した事項からの更新内容
- 次に開示を行うことを予定している時期
⑤リスク情報
リスク情報の説明では、認識するリスク及び対応策を明確に示す必要があります。具体的には、成長の実現や事業計画の遂行に重要な影響を与え得る主要なリスク及びその対応策についてです。
投資家を惹きつける魅力的なエクイティストーリーの作り方
市場の成長性を明確に伝える
投資家を惹きつけるためには、自社が参入している市場の成長性を明確に伝えることが重要です。縮小傾向にある市場では、事業の将来性に疑問が持たれかねません。その一方で、全体の市場規模が大きく、その中から一定のシェアが獲得できる見込みがあれば、投資家の期待値は高まるでしょう。
例えば、近年上場が相次ぐSaaS型サービス企業を見ると全事業者にニーズのあるバックオフィス業務に特化したものが多数あります。このような事例は、全体の市場規模が大きいことを前提に、その中から着実にシェアを獲得していることを物語っています。
市場の成長性は、投資家が事業の将来性を判断する大きな材料となります。自社が参入している市場の規模や成長見通し、シェア獲得の可能性を具体的なデータとともに示すことが求められます。
成長が期待できる市場であることを明確に伝えることで、投資家の関心と期待を高めることができます。
事業推進力を保持できていること伝える
成長市場で自社のプロダクト・サービスを展開するためには、組織の推進力が不可欠です。
特にSaaS事業においては、優秀な開発チームはもちろんのこと、それらを適切に統括できる経営チームの力が重要です。
そのため、投資家の中には企業の経営陣や開発チームにおけるメンバーの経歴やポジション、役割までくまなく精査する方もいます。なぜなら、優れた人材が適材適所で配置され、事業を着実に推進できる体制が整備されているかどうかが、投資判断の決め手の1つとなるためです。
そこで、エクイティストーリーで自社の経営陣や中核人材を紹介して彼らの実力や経験、組織内における役割りを明確に示す必要があります。事業推進における強みを具体的なデータと共に伝えることで、投資家の信頼を高めることができます。
自社のプロダクト・サービスの魅力を伝える
投資家を惹きつけるエクイティストーリーを作るためには、自社のプロダクト・サービスの魅力を明確に説明することが欠かせません。自社のプロダクト・サービスが既存のものと比べてどのような革新性や優位性を持つのか、それらがどのような効能やメリットをもたらすのかきちんと伝えましょう。
エクイティストーリーを作る時の注意点
エクイティストーリーを作成する上で最も注意したい点は、伝える内容に実現可能性とその根拠が含まれていることです。自社の魅力をアピールする際、現実的でない過大な目標を掲げてしまうと、投資家から疑念を持たれてしまいます。そうならないために、自社のリソースで達成可能な範囲内での目標設定が不可欠です。
嘘やごまかしは絶対に避けなければなりません。虚偽のエクイティストーリーを作った場合、投資家の信頼を裏切ることになります。
その結果、資金調達はおろか企業価値をも損ねかねません。真摯な姿勢で事実に基づいたエクイティストーリーを作り上げて投資家の理解と納得を得ることを大切にしましょう。
エクイティストーリーの作り方を学んで企業価値を向上させよう
本記事では、エクイティストーリーで取り扱いたい項目やその作り方についてご紹介してきました。
ここまででお伝えした通り、魅力的なエクイティストーリーを作り、投資家からの資金調達を円滑に進めることが、企業価値の向上につながります。エクイティストーリーの作り方を学び、実践することで自社の企業価値を大きく高めていきましょう。