株主総会の事業報告書とは?書き方や作成時の注意点も紹介
株主総会の準備を進めるうえで、事業報告書を作成することは避けられません。事業報告書は、会社の経営状況や事業内容を株主に報告するための重要な文書です。
法令で定められた記載事項や作成期限があり、担当者は書類作成に多くの時間を費やします。しかし、事業報告書の作成手順や注意点を把握しておけば、効率的に作業を進められるでしょう。
本記事では、事業報告書の概要や書き方について解説します。これから事業報告書の作成に携わる方は、ぜひ参考にしてください。
目次
・株主総会の事業報告書とは?概要を解説
・事業報告書とは
- 決算報告書と事業報告書のちがい
- 株主総会で使う事業報告書の記載事項について
・株主総会で使える事業報告書の書き方・流れ
1. 事業報告書に掲載する情報を集める
2. 雛形に合わせて事業報告書を作成する
3. 各部門で内容を確認してもらい承認を受ける
4. 事業報告書を提出する
・株主総会の事業報告書をわかりやすく作成するためのポイント
1. フォントは大きくする
2. インパクトを出す
3. 要素はシンプルにする
4. 動画を活用する方法もある
・株主総会の事業報告書を作成する際の注意点
1. 企業秘密は掲載しない
2. 株主から閲覧や謄写の請求があることを念頭に置く
・株主総会の事業報告書を作成する際はプロに依頼するのもおすすめ
株主総会の事業報告書とは?概要を解説
まず、事業報告書についてかんたんに解説します。
- 事業報告書とは
- 決算報告書と事業報告書のちがい
株主総会に向けて準備をするうえで知っておくべき知識を紹介するので、参考にしてみてください。
事業報告書とは
事業報告書とは、株式会社の経営状況を詳しく説明する重要な文書です。株式会社は、毎年この報告書を作成し、定時株主総会で報告しなければいけません。
株主は、財務諸表だけでは把握できない会社の実態について、事業報告書を見ることで確認できます。たとえば、スーパーマーケットチェーンの事業報告書には、出店計画や人材育成方針・環境への取り組みなどが記載されます。
数字だけでは伝えきれない会社の方針や取り組みを株主に伝えるのが、事業報告書の主な役割です。
なお、2006年の会社法改正以前は「営業報告書」と呼ばれ、財務諸表の一部として扱われていました。現在、事業報告書は財務諸表から独立した文書として位置づけられ、より詳細な非財務情報の開示が求められています。
決算報告書と事業報告書のちがい
決算報告書と事業報告書は、企業についてそれぞれ異なる側面から説明する役割があります。
決算報告書は、企業の財務状況を数字で説明する文書です。売上高や利益・資産の状況などを貸借対照表や損益計算書などの書類で示します。
一方、事業報告書には、会社の事業内容や従業員・役員に関する情報などの定性的な内容を記載します。なお、事業報告書にも貸借対照表や損益計算書などの計算書類が含まれることを押さえておきましょう。
企業は、適用される法律に応じて決算書類(決算書・計算書類・財務諸表)の作成が義務付けられています。一方、事業報告書は株式会社のみに開示義務があります。
株主総会で使う事業報告書の記載事項について
事業報告書を作成する際は「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型」を参考にしましょう。事業報告書における事業報告として記載すべき事項として、以下の内容が挙げられます。
・株式会社の現況に関する事項
・株式に関する事項
・新株予約権等に関する事項
・会社役員に関する事項
・会計監査人に関する事項
・業務の適正を確保するための体制等の整備に関する事項
・株式会社の支配に関する基本方針に関する事項
・特定完全子会社に関する事項
・親会社等との間の取引に関する事項
・株式会社の状況に関する重要な事項
引用:会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型
以上の内容は、必ずしもすべて記載する必要はなく、公開会社・非公開会社の条件や状況によって省略可能です。
株主総会で使える事業報告書の書き方・流れ
ここからは、株主総会で使える事業報告書の書き方や流れについて4つのポイントにわけて解説します。
- 1. 事業報告書に掲載する情報を集める
- 2. 雛形に合わせて事業報告書を作成する
- 3. 各部門で内容を確認してもらい承認を受ける
- 4. 事業報告書を提出する
事業報告書の作成に携わる方にとって、参考になる情報を紹介します。ひとつずつ見ていきましょう。
1. 事業報告書に掲載する情報を集める
まず、事業報告書に掲載する情報を集めることから始めます。経営状況や事業活動・人事情報などの全社的な情報を集めましょう。
たとえば、以下のような情報があれば事業報告書に掲載できます。
部門 | データ |
---|---|
営業 | 主力商品の売上高が前年比120%に成長 |
人事 | 女性管理職比率が20%に向上 新卒採用人数が30名増加 |
また、親会社や子会社がある場合は、グループ全体の情報も不可欠です。集めた情報は、経営の視点で分析し、重要度に応じて取捨選択します。
ただし、新製品の開発計画など、企業秘密に関わる情報は掲載を控えることに注意しましょう。
2. 雛形に合わせて事業報告書を作成する
事業報告書は、日本経済団体連合会が公表する雛形をもとに作成します。作成前に会社法の改正や団体の改訂内容を確認し、最新の要件に対応しているか確認しましょう。
なお、すべての会社に共通する記載事項は、以下のとおりです。
・株式会社の状況に関する重要な事項
・業務の適正を確保するための体制等の整備に関する事項
・株式会社の支配に関する基本方針に関する事項
・特定完全子会社に関する事項
・親会社等との間の取引に関する事項
参考:会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型
事業報告書には、決算書からは読み取ることが難しい会社の事業内容や役員・従業員に関する情報などを補足する役割があります。
3. 各部門で内容を確認してもらい承認を受ける
事業報告書を作成したら、内容に誤りがないか各部門に確認してもらいましょう。複数部門に関わる案件は、部門横断的にチェックする必要があります。
とくに、監査役設置会社と会計監査人設置会社では、監査役による監査が必須です。
最後に取締役会での承認を経て、事業報告書を正式な文書として確定します。
4. 事業報告書を提出する
事業報告書が完成したら、株主総会が開催される前に株主に提出します。株主総会の2週間前までには、株主に事業報告書を届けなくてはいけません。
そのためには、事業報告書を事業年度終了から3ヶ月以内に作成する必要があります。たとえば、3月決算の会社では以下のようなスケジュールとなるでしょう。
時期 | 内容 |
---|---|
4~5月 | 事業報告書を作成し、内部承認を得る |
5月末 | 監査役の監査を完了し、取締役会での承認を受ける |
6月上旬 | 株主への送付を開始する株主総会2週間前までの到着を確保する |
なお、非公開会社の場合は、総会1週間前までの送付でかまいません。提出された事業報告書は、定時株主総会の2週間前(非公開会社の場合は、総会1週間前)の日から5年間、本店での保管が必要です。
このように事業報告書は、株主の権利を守るため、法令に基づく厳格な提出と保管が求められます。
株主総会の事業報告書をわかりやすく作成するためのポイント
次に、わかりやすい資料を作成するためのコツを4つ紹介します。
- 1. フォントは大きくする
- 2. インパクトを出す
- 3. 要素はシンプルにする
- 4. 動画を活用する方法もある
資料制作を手がける弊社のノウハウを紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
なお、弊社ストリームラインでは、資料制作のご依頼を承っています。IR資料の作成についてお困りの方は資料作成のワンストップ代行サービス「LEAD」までお気軽にご相談ください。
1. フォントは大きくする
事業報告書を作成する際は、適切なフォントサイズを選択することが重要です。スクリーンに投影する場合、24pt以上に設定するのがおすすめです。
また、スライドサイズによっても最適な文字の大きさは変わります。
スライドサイズ | 文字サイズの目安 |
---|---|
小サイズ(A4 など) | 20~30pt |
中サイズ(16:9) | 30~50pt |
大サイズ(スクリーン投影用) | 50~80pt |
文字の大きさによって1枚のスライドに盛り込める情報量が変わるため、実際にスクリーンに投影してみて、文字サイズに違和感がないか確認してみましょう。
フォントサイズについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
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2. インパクトを出す
重要な情報を効果的に伝えるには、インパクトのあるスライドを作成する必要があります。聞き手に伝えたいことを絞って強調すれば、株主の心に残りやすくなるでしょう。
たとえば、スライド上部に伝えたいメッセージを配置し、下部に補足する情報を配置すると聞き手に注目すべきポイントを効果的に伝えられます。
また、アピールしたい箇所にアクセントカラーを使えば、聴衆の視線を自然に誘導できるでしょう。
ただし、色は3〜4種類に抑え、統一感のあるデザインを維持することが大切です。このように事業報告書は、視覚的に工夫することで株主の理解を効果的に促せます。
3. 要素はシンプルにする
事業報告書は簡潔な表現で、必要な情報を正確に伝えることが重要です。
ひとつの文章でひとつの内容のみを伝えることを意識すれば、直感的にわかりやすいスライドを作成できます。
また、1枚のスライドに盛り込む内容は1つのメッセージに絞ることも大切です。事業報告書は、伝えるべき内容が多く煩雑になりやすい傾向がありますが、できるかぎり簡潔さを意識してスライドを作り込みましょう。
4. 動画を活用する方法もある
近年では、事業報告書の補足資料として動画を作成するケースも出てきています。たとえば、ヤマトホールディングスが事業報告を動画でまとめている事例などが挙げられます。
例:ヤマトホールディングス|株主総会情報>159期定時株主総会
動画を活用すれば、プロのナレーションやBGMを利用できるため、聴衆の興味を惹きつけやすくなるでしょう。また、口頭での説明より動画を活用したほうがアニメーションを取り入れやすくなるため、直感的にわかりやすくなる効果も期待できます。
ただし、一旦動画を作成してしまうと直前に内容を差し替えたり修正を加えたりするのが難しくなる点だけ注意が必要です。
株主総会の事業報告書を作成する際の注意点
最後に、事業報告書を作成する際の注意点を紹介します。
- 1. 企業秘密は掲載しない
- 2. 株主から閲覧や謄写の請求があることを念頭に置く
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 企業秘密は掲載しない
事業報告書では、企業の競争力を守るため機密情報を掲載することを避ける必要があります。開示・非開示の判断は、情報の性質や法令要件に基づいて行うのが基本であることを押さえたうえで、企業の競争優位性に関わる情報は、慎重に取り扱いましょう。
たとえば、自動車メーカーの事業報告書では以下のような情報は掲載を控えます。
- 新型エンジンの詳細な設計図面や製造工程の具体的な手順
- 部品メーカーとの取引価格や具体的な契約内容
- 新車開発プロジェクトの詳細なスケジュールや技術的特徴
ただし、投資家の判断に必要な情報は適切に開示する必要があります。このように事業報告書は、企業価値の保護と情報開示のバランスを取ることが重要です。
2. 株主から閲覧や謄写の請求があることを念頭に置く
事業報告書は株主からの閲覧・謄写請求に迅速に対応する法的義務があります。会社法では、株主に閲覧や謄写の請求権が認められているからです。
そのため、曖昧な表現や誤解を招く記載は避ける必要があります。記載内容が客観的な事実にもとづいているだけでなく、あとから説明を求められても問題ない内容にしなくてはいけません。
このように事業報告書は、株主の権利を尊重し、透明性の高い情報開示が求められる点を押さえておきましょう。
株主総会の事業報告書を作成する際はプロに依頼するのもおすすめ
事業報告書の作成は、企業の経営状況を正確に伝える重要な業務です。法令に基づく厳格な提出期限や保管義務があり、専門的な知識が必要です。
経営企画部門や総務部門の担当者は、本来の業務に加えて事業報告書の作成に追われ、負担が大きくなっています。
そこで、プロの資料作成サービスに依頼すれば、担当者の業務負担を軽減しながら質の高い事業報告書を作成できるでしょう。
外部の専門家に依頼することで、客観的な視点からの分析や見やすいデザイン・効果的なプレゼンテーション方法などのノウハウを活用できます。
なお、弊社ストリームラインでは、資料制作のご依頼を承っています。IR資料の作成についてお困りの方は資料作成のワンストップ代行サービス「LEAD」までお気軽にご相談ください。