分かりやすい業務マニュアルの作り方とは?7つの手順と6つのポイントを紹介
生産性向上や業務標準化に欠かせない業務マニュアル。誰もが使いやすい資料にするために、相当な時間と労力を要した経験はないでしょうか?手順やポイントをおさえると、効率的かつ効果的に作成することができます。
業務マニュアルとは?
業務マニュアルは特定の仕事やタスクを効率的かつ一貫した方法で遂行するために、従うべき手順やガイドラインを文書化したものです。これには、組織内の特定の業務プロセス、手順、基準なども含まれます。主な目的は、新入社員のトレーニングや作業の品質維持、作業プロセスの効率化、そして組織全体でのベストプラクティスの共有です。
業務マニュアルは業務の標準化を促進し、誰でも簡単に同じ方法で作業を行えるようにサポートします。会社の指針を考慮しつつ、最適化された業務マニュアルを作成することで、社員が協調して効果的に業務を進めることが可能になります。
手順書との違い
業務マニュアルと手順書は似ているように思えますが、それぞれ異なる役割を持っています。
業務マニュアルは組織全体の業務プロセスや手順、方針、規則などを包括的に記載した文書です。これには、業務の実行方法に加えて、組織の理念や目標を反映させる内容も含まれます。
一方、手順書は特定の業務や作業の手順を具体的に細かく示したもので、業務マニュアルの中から詳細な手順を抜き出しています。手順書は日常的な業務の実行をサポートし、作業者がスムーズに作業を進めるための具体的な指針を提供します。
業務マニュアルは組織の一貫性と効率性を確保するために重要であり、手順書は実際の業務遂行において必要である具体的な手順を明確にする役割を担っています。
内容 | 役割 | |
業務マニュアル | 組織全体の業務プロセスや手順、方針、 規則などを包括的に記載した文書 | 組織の一貫性と効率性を確保する |
手順書 | 特定の業務や作業の手順を 具体的に細かく示したもの | 業務遂行において具体的な 手順を明確にする |
業務マニュアルを作成する3つの目的
①業務の標準化と品質維持
業務マニュアルを作成する主な目的は、業務を標準化し、全ての従業員が同じ基準で業務を遂行できるようにすることです。
マニュアルには明確な作業手順や品質基準が記載されており、これに従うことで作業の品質を一定に保ちます。例えば、業務における重要な手順やチェックポイントが統一されることで、ヒューマンエラーが減少し、生産性が向上します。
②業務の効率化
業務マニュアルは業務の効率化にも影響します。
明確な手順や助言が含まれているため、新人や未経験者でもスムーズに業務を進めることができます。
また、問題解決やトラブルシューティングに関する情報がマニュアル化されているため、迅速かつ正確に対応することができます。
これにより、業務の生産性が向上し、組織全体の効率が高まります。
③属人化リスクの低減
業務マニュアルは業務の属人化を防ぐ役割も果たします。
マニュアルが存在することで業務を特定の個人に依存せず、全ての従業員が同じ品質を提供できるようになります。
マニュアルに記載された知識やノウハウを組織全体で共有することで、個人の退職や休暇中でも業務の連続性が保たれ、リスク管理が強化されます。
業務マニュアルの作り方7ステップ
①業務内容の情報収集
業務マニュアルを作成する際の最初のステップは、業務内容に関する情報収集です。この段階では、以下のポイントに留意することが大切です。
まずは、マニュアルの目的と範囲を明確に定めます。業務プロセスの標準化、新入社員の教育、品質管理の向上など、目的に応じて具体的な目標を設定します。
また、マニュアルがカバーする業務の範囲を選定する際には、特定の職務、プロセス、あるいは全体の企業方針を考慮し、適切な範囲を設けることが重要です。無駄な情報は避け、必要な情報に焦点を当てます。
次に、業務の現場での情報収集を行います。文書や資料だけでなく、実際に現場を訪れて作業を行っているスタッフに直接ヒアリングすることが効果的です。
現場のノウハウやコツを把握することで、実践的で役立つマニュアルを作成することができます。
②スケジュール決め
業務マニュアルを効果的に作成するためには、スケジュールの設定が不可欠です。
まず、マニュアルの目的と範囲を明確にし、カバーする業務内容や対象者、利用シーンを把握します。その上で、作成から運用までの全工程を含めたスケジュールを立てます。
具体的には、以下のステップを踏んで進めます。
まず計画段階でマニュアルの目的を定め、必要な範囲や内容を洗い出し、作成の目標日を決定します。
その後、初版作成後に関係者のレビューと修正を行い、最終的な承認を得て運用を開始します。
スケジュールを立てる際には、業務の繁忙期や重要なプロジェクトのスケジュールと調整し、特に新入社員の教育や新規プロジェクトの立ち上げ時期などにマニュアルが必要とされるタイミングを把握しましょう。
マニュアルの必要性と期限を明確にし、計画的に進めることで、スムーズなマニュアル作成と効果的な運用が実現できます。
③業務の流れを整理
マニュアルの対象となる情報等が集まったら、フローチャートなどで業務の流れを可視化しましょう。業務の全体像を把握し、洗い出した業務内容を体系的に整理するステップです。
ただし、情報収集した全ての情報を盛り込む必要はありません。読み手を想定した上で、マニュアルに記載するかどうかを精査してください。この過程で、非効率な業務が見つかることもあります。
これらの判断基準がないと、作業担当者が延々と机の上のホコリを掃除するような事態も招きかねません。
文字で言語化することだけではなく「過去のケース」や「作業後のチェックリスト」を併用することで、作業の経験の浅い人であっても、基準に基づいて作業をしやすくなるでしょう。
④構成や目次を検討する
次にマニュアル全体の構成や目次を検討します。これは読者が迷わずに必要な情報を見つけることができるようにするための大事なステップです。
構成と目次を考えることは、マニュアル全体の構成を俯瞰するための重要な役割を果たします。主要なセクションや章をリストアップし、それぞれがどのような内容を扱うのかを明確に定義します。
一般的には、「はじめに」「目的と範囲」「用語解説」「基本的な操作手順」「トラブルシューティング」「FAQ」などのセクションが含まれます。これらを適切に考案し、全体の流れを確認します。
⑤マニュアルを作成する
マニュアル作成する際、わかりやすい表現や読みやすい文体を意識することが重要です。そして情報の過不足に気づいたら、適宜修正するようにしましょう。
また最初から細部にとらわれすぎると、マニュアルが複雑になり過ぎ、作業の進行に支障をきたす可能性があります。
まずは、大枠から順に内容を詰めていくやり方でマニュアルを作成していきましょう。
⑥マニュアルの仮運用をする
いよいよマニュアルが出来上がったら、まずは仮運用をしてみましょう。マニュアルをもとに、実際の現場で仕事を行ってみるのです。
仮運用の目的はマニュアルのブラッシュアップです。実際の現場でマニュアルをもとに作業をしてもらい、実務者に「もっとこうした方がいい」とフィードバックをもらうことです。
このフィードバックを基に、マニュアルの内容を改善し、より使いやすいものにしていきます。
さらに、完成したマニュアルでテスト運用を行い、内容の抜け漏れやわかりづらい点を洗い出します。
実際に使用した人からのフィードバックを収集し、必要に応じて修正を加えてください。
⑦業務マニュアルの改善
最後のステップでは、仮運用で得たフィードバックを活用し、マニュアルを改善していきます。
これにより、業務マニュアルは一旦完成し、本運用がスタートします。
ここで一番大切なのは、現場でのマニュアル運用がスタートした後もきちんと状況を見守っておくことです。
定期的に現場に足を運んで、マニュアルの使い勝手や、マニュアルから外れるケースがないかをヒアリングすることを心がけてください。
さらに改善を進めれば、生きたマニュアルとして現場に根付くことになるでしょう。
分かりやすいマニュアルの6つのポイント
①読み手のレベルにあった内容になっている
マニュアルを作成する際は、読み手を意識して作ることが大切です。読み手を決めておくことで、マニュアルが扱う範囲が定まります。
たとえばマニュアルの読み手が新卒入社者の場合、あまりにも膨大な業務内容を詰め込むのは避けた方がいいでしょう。同様に、専門用語や社内用語もなるべく減らすべきです。
読み手のレベルに合わせたマニュアルを作成できれば、マニュアルは非常に頼もしい存在になるはずです。
②5W1Hが明確になっている
業務マニュアルを作成する際には、5W1Hを明確にすることが重要です。
誰が使うか (Who) | マニュアルを使用する対象者は誰かを明確にします |
いつ・どこで使用するか (When、 Where) | マニュアルが使用されるタイミングや場所を具体的に記載します |
何についてのマニュアルか (What) | マニュアルがカバーする範囲や内容を明確に定義します |
なぜ作成するか (Why) | マニュアルの作成目的や必要性を明確に説明します |
どのように使用するか (How) | マニュアルの具体的な運用方法や手順を示します |
これらの要素を意識することで、業務の流れを整理し、読み手に伝わりやすいマニュアルを作成することができます。
③仕事の全体像がわかる
業務マニュアルを作成する際には、読み手が仕事の全体像を理解できるように配慮することが重要です。
作業内容の細部だけでなく、仕事の全体像を理解できるような構成にしていきましょう。
読み手が担当する業務が一部であっても、全体の流れや目的を説明することで、作業の意義や連携の重要性を理解しやすくします。
業務がどのように全体のワークフローに組み込まれているかを示すことで、読み手の自己啓発や業務最適化のアイデアが生まれやすくなります。
マニュアルを作成する際には、読み手の視点から見て理解しやすい構成と具体的な表現を心がけ、業務の全体像が一目で把握できるようにしましょう。
④目標達成に至るまでの行動が簡潔に分かる
目標管理制度などの人事評価同様、業務マニュアルにおいても目標達成に至るまでの行動は明記した方がよいでしょう。
この際、「なるべく具体的な行動」と「数値化」という2つの観点を意識してください。
例えば「重要書類を紛失しない」目的の、「机をきれいにする」という作業を例にとります。
この場合の行動は「書類を見かけたら、右上のキャビネットに収納する」となります。
「社判入りの書類の場合は、上位者に判断を仰ぐためにファイリングする」など、業務のフローを踏まえた行動化をするとさらに効果的です。
また、数値化できる業務マニュアルの場合、「コールセンターの場合は、〇コール以内にピックアップする」と、数値化も意識してください。
仕事の能力は一人ひとり異なりますが、業務マニュアルに目標達成までの行動を明記することで、ある程度の成果のばらつきを防ぐことができます。
⑤図表や写真を使う
複雑なプロセスや手順を図表、フローチャート、イラストで示すことで、テキストだけで説明するよりも理解が早まります。特にソフトウェアやアプリケーションの操作手順を説明する場合には、スクリーンショットを活用することをおすすめします。これにより、具体的な操作方法やボタンの位置が視覚的に理解しやすくなります。
⑥イレギュラーをまとめる
基準を外れる可能性がある業務が予想される場合は、業務マニュアルにイレギュラーケースを含めることをおすすめします。
特に接客など柔軟な対応が求められる業務では、イレギュラーケースについて詳細に記載することが重要です。ただ想定するだけでなく、過去に実際に発生したクレームやトラブルの事例、およびそれに対する具体的な対応方法をまとめると効果的です。
マニュアルにイレギュラー対応のノウハウを記載することで、同業他社との差別化にもつながるでしょう。
業務マニュアルを効率的に作成するには
適したOfficeツールを使う
業務マニュアルを作成する際には、適切なOfficeツールの選定が重要です。以下では、それぞれのツールの特性と、どのような業務に適しているかを紹介します。
①Word(ワード)
ワードは文章を中心とした文書作成に特化しています。箇条書きや表の作成機能が豊富であり、文字の装飾やレイアウト調整も柔軟に行えます。複雑な業務の手順や詳細な説明が必要な場合に最適です。
②Excel(エクセル)
エクセルは表計算ソフトとして知られており、数値データの集計や処理に優れています。
業務マニュアルで大量のデータを整理し、システムやプロセスの一元管理を行いたい場合に適しています。特に数値や統計に基づく分析を含む業務において重宝されます。
③Powerpoint(パワーポイント)
パワーポイントはプレゼンテーション作成に特化しており、視覚的に情報を伝えるのに適しています。図やグラフ、画像、動画などを組み合わせて、業務のフロー図やプロセスの可視化を行うことができます。
これらのツールはそれぞれ異なる特性を持っており、業務のニーズや目的に応じて適切に使い分けることが重要です。
テンプレートを活用する
業務マニュアルを効率的に作成するためには、テンプレートを積極的に活用することがおすすめです。
テンプレートを使用することで、ゼロから文書を作成する手間を省くことができます。一般的なテンプレートには、必要なセクションや項目があらかじめ設定されており、これにより短時間でわかりやすいマニュアルを作成することが可能です。
アウトソーシングをする
業務マニュアルの作成を外部の専門家にアウトソーシングするのも、一つの効果的な方法です。この方法にはいくつかの利点があります。
まず、自社の社員が本業に集中できるという点が大きなメリットです。業務マニュアルの作成には時間と労力がかかるため、これを外部に任せることで、社員の負担を軽減し、生産性を向上させることができます。
また、外部の専門家に依頼することで、業務マニュアル作成の実績やノウハウを持ったプロフェッショナルによる高品質な成果物が期待できます。業務の標準化や効率化を図るためにも、外部の視点や経験は貴重です。
さらに、人件費のコスト削減や、作業の効率化を進めるためにも、アウトソーシングは有益な選択肢と言えます。
運用のコツ
業務マニュアルを運用する際は、以下のポイントに留意することが重要です。
①チームで運用する
マニュアルの作成段階から一人に任せないことが大切です。一人だけに依存すると、業務の多様性や深さをカバーするのは困難です。チーム全体で協力し、異なる視点からマニュアルを充実させましょう。
そして運用段階でも担当者も複数人にすることで、マニュアルの内容が偏らず、適切に保守・管理されることを確保します。
②定期的に見直しをする
定期的なマニュアルの見直しを行い、現在の業務プロセスやツールの使用方法に即した内容に保つことが重要です。変更があれば、関係者にフィードバックを求め、同意を得た上でアップデートしていきます。
③クラウドベースの管理システムの活用
Google ドライブ、Microsoft OneDrive、Dropboxなどのクラウドベースのシステムを活用すれば、マニュアルの更新作業や共有を容易にすることができます。
これらのポイントを実践することで、業務マニュアルの運用を効果的に行い、組織全体の生産性と品質を向上させることができます。
まとめ
業務マニュアルは、仕事を円滑に進めるために不可欠です。シンプルでわかりやすいマニュアルを作成することで、業務効率が向上します。マニュアル作成の目的を明確にし、課題を丁寧に洗い出して、読み手にとって使いやすいマニュアルを作成していきましょう。
本記事で紹介した作成手順やポイントを参考にして、シンプルで使いやすい業務マニュアルを作成してみてくださいね