フォント選びでIR資料が変わる!フォントのメリット・デメリットを解説
IR資料は投資家・株主などに対し、経営状況や財務データなどの情報を提供するための資料です。
フォントで資料の印象や情報の伝わり方が大きく変わるため、IR資料をデザインする際には目的や読み手の状況を理解し、適切なフォントを選ぶことが大切です。
ここで紹介する3つの和文フォントの特長を知り、IR資料に最適なフォントを選びましょう。
はじめに
IR資料は比較的長い説明文やグラフ・表など多様な情報が詰め込まれる性質を持つため、可読性を下げないように慎重にフォントを選ぶ必要があります。
この記事では上場企業様のIR資料を150件以上制作した弊社の実績をもとに、代表的な和文フォント3つのメリット・デメリットをご説明します。
IR資料でのフォントの役割
IR資料はその特性上、企業内だけでなく、多くの投資家が目にする資料です。
投資家の中には中高年の方、視覚的な障害がある方など、さまざまな背景をお持ちの方がいます。
また近年はSDGsの観点からユニバーサルデザインが推奨されていることからも、多くの方が読みやすく・情報を適切に伝える資料であることがIR資料にとって大切なポイントとなっています。
そのため、テキスト情報を伝えるためのフォントは資料デザインの中でも非常に重要なポジションにあると言ってよいでしょう。
フォントのデザイン・設計にはそれぞれ特徴があり、企業イメージや資料の内容に合ったものを選ぶことが重要になってきます。
またIR資料の場合、スクリーンでの表示以外にもサイト掲載の為のPDF化が必要となります。PDFとの互換性にも注意してフォントを選んでいきましょう。
【関連記事】
▶ PDFに変換したとき、フォントが変更されてしまう場合の対処法
それでは弊社がオススメする3つのフォントを以下で順番にご紹介いたします。
①BIZ UDPゴシック
BIZ UDPゴシックは文字がクリアに見えるように工夫された、ユニバーサルデザインのゴシック体フォントです。Windows10から標準搭載されています。
BIZ UDPの「P」はProportional(プロポーショナルフォント)の意味で、欧文や「かな」の文字幅・字間が調整されており、文字間のまとまった印象に繋がります。
似た形の数字や仮名文字の濁点・半濁点が判別しやすい設計のため、読みやすさを重視する資料にオススメされています。
【メリット】視認性と文章のまとまり感がある
BIZ UDPゴシックをIR資料に使う際、文字の視認性が高いというメリットがあります。
表やグラフなど、IR資料の中でも小さい文字を使用する場面がありますが、小さいフォントサイズでも一文字一文字が見やすくなっています。
「P」のついていないBIZ UDゴシックは、名称が似ていますが等倍フォントのため文字間が調整されておらず、不揃いで読みにくい印象を与えてしまうことに注意しましょう。
【デメリット】レギュラーとボールドの差が少ない
BIZ UDPゴシックのデメリットは、レギュラーとボールドの差が少ない点です。
強調する際には文字の色を変えたりと、工夫が必要になる場合もあります。
②游ゴシック
游ゴシックは「昔からある普通の」ゴシック体として作成されたフォントです。
長文でも読みやすく識別性に優れているため、デザイナーの中でも人気の高い書体のひとつです。
書体には「ふところ」と呼ばれる画と画が構成している内側の空間があります。それが広いものもゴシック体には多いのですが、游ゴシックは広くなりすぎないよう調整されています。
文字の形のバランスがよく、誠実な印象を与えるゴシック体です。
【関連記事】
▶ 文字組のデザインとは?レイアウトやおすすめの本についても解説【バナーデザインにも活かせる】
【メリット】可読性に優れ誠実な印象を与える
一文字一文字がバランスの良い書体のため、長い文章を使用することが多いIR資料でも読みやすいというメリットがあります。
また、装飾された書体ではなく明朝体と並べて使っても違和感の無いように作成されているので、真面目で誠実な印象を与えることができます。読み手に誠実な印象を持たせたい資料におすすめです。
游ゴシックはWindows 8.1以降、Mac OS 10.9以降に標準搭載されており、互換性の面でに便利なフォントとなっています。Windows7の場合はMicrosoftの公式サイトからダウンロードすることが可能です。
【デメリット】レギュラーが細すぎる
パワーポイントなどの資料内で使用する際、レギュラーの「游ゴシック」では書体が細すぎて可読性に難がある点がデメリットとなります。
複数のウエイトが用意されているので、本文には「游ゴシック Medium」、見出しには「游ゴシック」のBoldを使うことをおすすめします。
また、等倍フォントのため、やや文字間が調整されていない印象を与えてしまいます。
パワーポイントで使用する際には文字間の細かい調整が難しいこともあり、特にカタカナの文字間が広く感じてしまうかもしれません。
③メイリオ
メイリオはもともとWindows Vistaのシステムフォント向けに開発されたフォントです。
名称の由来が日本語の「明瞭」からきており、その名のとおり明瞭で読みやすいフォントとして設計されています。幅が広めに作られており、遠くからでも読みやすくディスプレイ表示に適していています。
【メリット】視認性が高い
メイリオは遠くからでも視認性が高いため、株主総会などの大きい会場の発表に適しています。またレギュラーとBoldの差が大きく、フォントを強調がしやすい点がメリットとして挙げられます。
【デメリット】文字幅が大きいため、少し個性がある
文字幅が大きいので少し個性があり、資料の内容によっては雰囲気に合わない場合があります。
真面目な企業メッセージなどの場面に使用するには、やや不向きだと感じる方もいるかもしれません。
このように、文字幅が大きいことは使用するシーンによってメリットにもデメリットにもなっています。
また、下の余白が他のフォントより大きく、図形などと組み合わせた際に上下がずれてしまうという特徴もあります。
メイリオの使い方については下記の記事で詳しく紹介していますので、是非参考にしてください。
【関連記事】
▶ 【図解】優秀フォント「メイリオ」の使い方を徹底攻略!
表やグラフにぴったりのフォントの選び方
IR資料でよく使われる表やグラフなどの数値データを和文フォントで表現する場合、それぞれどのように見えるのかを確認してみましょう。
フォントで変わる!見やすさの違いをチェック
1枚目は棒グラフ内におけるフォントの違いを表した図になります。
このようなグラフでは数値を表示させる箇所が多いため、各フォントの数字表記の見え方に注目していきます。
また、2枚目の表の中では「売上高」 などの日本語テキストと「21,864」などの半角数字のデータが混在しているので、和文と英数字のバランスも一緒に見ていきましょう。
BIZ UDPゴシックは英数字も文字幅・字間が和文と同じになるように調整されているため、数値のセルの中では少し横方向に伸びているような印象があります。全角数字と半角数字の差がないことも特徴の一つです。
游ゴシックの場合、BIZ UDPゴシックと違い数字が半角数字に近い形になっているのが分かります。
英数字のバランスが良く、游ゴシックだけで組んでも違和感なく使用することができます。
メイリオは英数字でも視認性が高く、BIZ UDPゴシックや游ゴシックと比べてより線がはっきりしている印象があります。先ほど紹介した通りメイリオは少し文字の幅が広いため、洗練された印象を与えたい場合は欧文フォントを併用するのがベストです。
【関連記事】
▶ パワーポイントでフォントを一括変換して見やすい資料を作る方法
データが伝わりやすくなるフォントの工夫
①フォントサイズ・ウエイト・色などを調整する
下の図のように、游ゴシックでグラフを作成した場合、数値をレギュラーの太さのままにしていると、線が細く印象に残りにくくなっています。
今回目立たせたいのは一番右側の青い棒グラフ部分なので、その数値だけフォントのサイズを大きくし、太さを調整しました。
また色をグラフと同じ青色にすることで他の数値との差が明確になり、伝えたい情報を強調することができます。
目立たせたい数値は
①サイズを大きくする ②ウエイトを太くする ③フォントの色を変える
②欧文フォントを併用する
ここまで和文フォントを中心に紹介してきましたが、表やグラフなど数字使用する要素が多くある場合、英数字に欧文フォントも併用するとデータが見やすくなります。
以下の3つのフォントをパワーポイント資料にオススメしています。
メイリオとSegoe UIの組み合わせを見てみましょう。
視認性が高いため、メイリオだけでも十分読みやすいのですが、やはり全体的に幅広になってしまう印象があります。
Segoe UIは全体的にシャープな印象を持つため、併用するとテキストが見やすい幅に収まりました。
また太字にした際の視認性がメイリオと同等のため、遠くから見る場合でも視認性が保たれています。
和文フォントと欧文フォントを組み合わせる際には、それぞれのフォントの細さやサイズ感に注意しましょう。たとえばフォントの細さが合わず、欧文だけが目立ってしまうとちぐはぐな印象になってしまいます。
適切に組み合わせることで、洗練された印象を与え、資料の見やすさを向上させることが可能になります。
【関連記事】
▶ パワーポイント資料に適した欧文フォント3選
まとめ
フォントは使用される範囲が資料の中でも多く、全体的な印象に繋がる要素です。
どんなフォントも一長一短の性質を持つため、その特長を理解して選ぶことが大切です。
また「伝える相手がだれか」「読み手の状況はどうか」「どんなイメージを持ってほしいか」など、資料の目的をしっかりと把握しておくことも重要です。
フォントの特長やイメージを理解し、資料の目的や状況にとって最適なものを選ぶことを是非心がけてみてください。