IR担当者が押さえるべきファイナンスの知識とは?指標や役立つ資格についても紹介

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IR担当者が押さえるべきファイナンスの知識とは?指標や役立つ資格についても紹介

IR担当者は、企業と投資家を結ぶ重要な架け橋です。その役割を効果的に果たすためには、ファイナンスに関する深い理解が欠かせません。IRにまつわる業務を担当する方は、幅広い知識やスキルが求められます。
そこで本記事では、IR担当者が身につけるべきファイナンスの知識と、それを習得するための方法を紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

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IR担当者が身に付けたいファイナンスの知識・スキル

IR担当者が身に付けたいファイナンスの知識・スキルには、以下のようなものがあります。

  1. 企業が価値を創造するメカニズム
  2. 資本市場の機能と役割
  3. 財務情報の解釈と分析の仕方
  4. 長期的価値創造と持続可能性
  5. 資料作成のスキル

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1. 企業が価値を創造するメカニズム

企業の価値は、経営資源を効果的に運用することで生み出されます。経営資源を運用することとは、人材や技術・ブランド力などを組み合わせて、付加価値の高い製品やサービスを生産する活動と言い替えられるでしょう。

一流シェフが素晴らしい料理を作る過程に例えると、以下のように説明できます。

一流シェフ(経営陣)が新鮮な食材(原材料)や高度な調理技術(技術力)・
評判の良いレストラン(ブランド力)という資源を活用
独自のレシピ(経営戦略)で調理することで、美味しい料理(製品・サービス)を創出
企業が価値を創造するメカニズム

なお、企業にまつわる価値として、以下の3点が挙げられます。

企業価値企業全体の価値を表す概念。株主価値と負債価値の合計として計算される。
株主と債権者の両方に帰属する価値の総和を指す。
事業価値企業が行う事業活動そのものの価値を指す。
企業価値から非事業用資産の価値を除いたものを指す。
株主価値企業の株主に帰属する価値のこと。
具体的には、企業の総価値から負債を差し引いた残りの部分を指す。
企業価値

このような概念や言葉の意味についても正しく押さえておくことが、IR業務を滞りなく遂行するための第一歩です。

2. 資本市場の機能と役割

資本市場は、企業と投資家を結びつける場です。資本市場の主な機能として、企業の資金調達と投資家の資金運用の機会を提供することが挙げられます。

また、2023年3月31日から「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」が全上場企業に要請されました。この取り決めについては、こちらの記事を参考にしてみてください。
「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の目的やポイント・事例も紹介

企業の価値を正しく投資家に伝えるためには、IR部門の働きが非常に重要です。

3. 財務情報の解釈と分析の仕方

財務諸表から適切に情報を読み取ることは、企業の経済状況を把握するうえで不可欠です。IR担当者は、貸借対照表や損益計算書・キャッシュフロー計算書を基に、多角的に分析するスキルが問われるでしょう。

各表の特徴は、以下のとおりです。

財務諸表目的主な内容
貸借対照表財政状態の把握資産・負債・純資産
損益計算書経営成績の把握収益・費用・利益
キャッシュフロー計算書資金の流れの把握営業・投資・財務活動による現金の増減

流動性や収益性・効率性などの観点から、財務比率を用いて企業の現状を評価します。また、財務情報とあわせて非財務情報も考慮に入れ、企業価値を総合的に判断することが重要です。

4. 長期的価値創造と持続可能性

企業を長期的に成長させるには、経済的価値と社会的価値を両立させなくてはいけません。ESG(環境・社会・ガバナンス)要素を考慮した経営戦略の策定が求められます。

持続可能な事業モデルの構築には、継続的なイノベーションと人材育成が重要です。たとえば、再生可能エネルギーへの投資を通じて、環境負荷低減と新規事業創出を同時に実現することなどが挙げられます。

ESGや企業の持続可能性にまつわる取り組みについては、以下の記事を参考にしてみてください。
【制作事例付】サステナビリティレポートとは?目的や盛り込むべき項目・作り方を解説

5. 資料作成のスキル

資料作成のスキルは、IR担当者に不可欠なスキルです。複雑な財務情報を整理し、わかりやすく伝えるためには、論理的思考力デザイン力などの幅広い能力が求められます。

資料を作成する際に押さえるべきポイントは、以下のとおりです。

データの視覚化財務情報をグラフやチャートで効果的に表現できる
平易な言葉で説明専門用語をかんたんな言葉で説明することで、幅広い投資家の理解を促進できる
デザイン情報の重要度を適切に強調すれば、印象に残る資料作成につながる

他にも意識すべきポイントは、多々あります。より詳しく知りたい方は、デザインのコツについて紹介したこちらの記事を参考にしてみてください。
【見るだけで伝わる】優秀なパワーポイントデザインの極意!デザインのコツも解説

なお、弊社ストリームラインでは、資料制作のご依頼を承っています。IR資料の作成についてお困りの方は資料作成のワンストップ代行サービス「LEAD」までお気軽にご相談ください。

IR担当者なら身につけておきたい指標10選【ファイナンスの知識】

IR担当者が身につけておくべき主要な財務指標には、以下のようなものがあります。

  1. PER
  2. PBR
  3. ROE
  4. ROIC
  5. 配当利回り
  6. 配当性向
  7. EV
  8. EBITDA
  9. ROA
  10. OP Margin

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1. PER(Price Earnings Ratio)

PERは「株価収益率」とも呼ばれ、企業の収益力を示す重要な指標です。株価を1株当たり純利益で除して算出し、株価が利益の何倍になっているかを表します。

PER = 株価 ÷ 1株当たり純利益

一般的に、低いPERは割安・高いPERは割高と解釈されますが、業種や成長性によって評価は異なります。具体的には、成長企業では高いPERでも正当化されるケースがあることも押さえておきましょう。

PERは、投資家の期待値を反映するため、同業他社との比較や時系列での分析が有効です。

2. PBR(Price Book-value Ratio)

PBRは「株価純資産倍率」として知られ、企業の資産価値に対する株価の評価を示します。株価を1株当たり純資産で割って算出し、1倍を基準に割安か割高かを判断する指標です。

PBR = 株価 ÷ 1株当たり純資産

PBRが1倍を下回る場合、理論上は企業の解散価値を下回っていることを意味します。

解散価値・・・企業が事業を停止して清算した場合に得られると想定される価値

なお、ブランド価値や技術力を強みにしており無形資産が多い場合は、PBRが高めでも適正と判断される場合があります。

3. ROE(Return On Equity)

ROEは「株主資本利益率」とも呼ばれ、企業の資本効率を測る重要な指標です。当期純利益を自己資本で割って算出し、投下資本に対する収益性を示します。

ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本

一般的に、ROEが高いほど株主資本を効率的に活用していると評価されます。つまり、ROEが高ければ企業が株主の資本を使って効率よく利益を上げていると言えるでしょう。

持続的な企業価値向上のためには、適正なROE水準の維持が求められます。

4. ROIC(Return On Invested Capital)

ROICは「投下資本利益率」として知られ、事業の収益性を示す包括的な指標です。税引後営業利益を投下資本で除して算出し、負債を含む総資本の効率性を測ります。

ROIC = 税引後営業利益 / (有利子負債 + 自己資本)

ROEよりも広範な資本効率を示すため、事業ポートフォリオの評価に適しています。複数の事業を展開する企業では、各事業のROICを比較することで経営資源の最適配分を検討できるでしょう。

5. 配当利回り

配当利回りは、投資家にとって重要な株主還元指標のひとつで、投資額に対する配当の割合を示します。

配当利回り (%) = (1株当たりの年間配当金 ÷ 株価) × 100

高配当利回りは魅力的ですが、企業の成長投資とのバランスを考慮する必要があることを押えておきましょう。たとえば、成熟産業の企業では高配当利回りが一般的ですが、成長企業では低くなる傾向があります。

配当の安定性や増配の可能性なども含めて、総合的に企業の株主還元姿勢を評価することが重要です。

6. 配当性向

配当性向は、企業の利益に対する配当金の割合を示す指標で、株主還元の積極性を測ります。当期純利益に対する配当金総額の比率で算出し、パーセンテージで表される指標です。

配当性向 (%) = (配当金総額 ÷ 当期純利益) × 100

高い配当性向は株主還元に積極的な姿勢を示しますが、成長投資への資金が減少する恐れもあります。安定成長期の企業では高い配当性向が好まれますが、急成長期の企業では低くなるケースがほとんどです。

そのため、企業の成長段階や投資家の期待に応じて、目標値を設定することが求められます。

7. EV(Enterprise Value)

EVは、事業価値として知られ、企業の総合的な価値を示す指標です。時価総額に有利子負債を加え、現金及び現金同等物を差し引いて算出します。

EV = 時価総額 + 有利子負債 – 現金及び現金同等物

企業買収における理論上の買収額を表し、企業間比較や価値評価に広く用いられます。

8. EBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization)

EBITDAは、利払い前・税引き前・償却前利益を表す財務指標です。営業利益に減価償却費などを加えて算出されます。

EBITDA = 営業利益 + 減価償却費 など

企業の本業での収益力を評価し、資本構成や会計方針の違いによる影響を排除します。企業間比較が容易で、キャッシュフローの近似値としても機能するのが特徴です。

EBITDAは、企業価値評価や債務返済能力の評価に活用されます。また、EVをEBITDAで除算したEV/EBITDA倍率は、減価償却費や税金などの影響を排除でき、国際間比較に適した指標です。

9. ROA(Return On Assets)

ROAは「総資産利益率(Return On Assets)」として知られ、資産の効率性を示す指標です。当期純利益を総資産で割って算出します。

ROA = 当期純利益 ÷ 総資産 × 100

企業が保有する資産をどれだけ効率的に利益に結びつけているかを示し、一般的にROAが高いほど資産が効率的に活用されていると評価されます。

たとえば、製造業では設備投資の効率性を、金融業では運用の効率性を評価する際に用いられます。ただし、業種や企業の成長段階によって適正水準は異なるため、同業他社と比較することが重要です。

10. OP Margin(Operating Profit Margin)

OP Marginは「営業利益率(Operating Profit Margin)」として知られ、企業の本業での収益力を示す指標です。

OP Margin = (営業利益 ÷ 売上高) × 100

なお、営業利益とは、売上高から売上原価や販売費・一般管理費を差し引いた利益のことを指します。OP Marginは、企業の価格設定力やコスト管理能力を反映します。

ただし、他の指標と同様、業種や企業の成長戦略によって適正水準は異なるため、個別の状況を考慮した解釈が必要です。

IR担当者がファイナンスの知識を身に付けるのに役立つ資格

最後に、IR担当者が身に付けておくと有利な資格を紹介します。

資格概要
IRプランナー日本IRプランナーズ協会が認定する資格IR業務に必要な資本市場・企業分析
・情報開示とIR活動に関する知識を体系的に学べる
CIRPIRプランナー資格のひとつ高度なIR知識と実務能力を証明する資格で、
資本市場や企業分析に関する深い理解が求められる
財務報告実務検定財務報告に関する実務的な知識を証明する資格財務諸表の作成や分析・
開示規制などについての学習でき、IR業務に直接役立つ知識を得られる
TOEIC英語によるコミュニケーション能力を測定するテストグローバル化が進む
現代のIR業務において、海外投資家とのコミュニケーションに必要な英語力を
証明するのに役立つ

このような資格は、IR担当者がファイナンスの知識を体系的に学び、投資家とのコミュニケーション能力を向上させるのに役立ちます。とくに、IRプランナーやCIRPの資格取得を目指すことは、IR業務に直接活かせるでしょう

IR担当者はファイナンスの知識を身に付けましょう

ファイナンスの知識は、IR担当者にとって不可欠なスキルです。企業価値創造のメカニズムや資本市場の役割を理解することで、より効果的に自社のIR情報を投資家に開示できます。

ファイナンスの知識を深めることは、自身のキャリア発展にもつながる重要な投資となるでしょう。

なお、弊社ストリームラインでは、資料制作のご依頼を承っています。IR資料の作成についてお困りの方は資料作成のワンストップ代行サービス「LEAD」までお気軽にご相談ください。

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