個人投資家向けのIR活動について解説|具体的な施策例や取り組む際のポイントも紹介

近年、企業のIR活動において個人投資家に向けた取り組みの重要性が増しています。IR活動は、安定した株主基盤の形成に不可欠です。
本記事では、個人投資家向けIR活動の意義や効果を解説するとともに、具体的な施策例を紹介します。さらに、IR活動に取り組む際の重要なポイントもお伝えするので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
・個人投資家とは
個人投資家とは金融商品に投資する個人
個人投資家は増加傾向にある
・個人投資家向けのIR活動に取り組むべき理由
1. 信頼関係を構築できる
2. 企業イメージが向上する
3. フィードバックを収集できる
4. 出来高を作れる
・個人投資家に向けたIR施策
1. メディアの活用
2. 説明会の開催
3. IRサイトの作成
・個人投資家向けにIR施策に取り組む際のポイント
1. 開示資料を改善する
2. 経営者の顔が見えるようにする
3. 情報にアクセスしやすくする
・個人投資家に向けたIR説明会資料の制作事例
・個人投資家に向けたIR施策はこれからの時代必須
個人投資家とは
まず、個人投資家について見ていきましょう。
個人投資家とは金融商品に投資する個人
個人投資家は、自己資金を用いて株式や債券などの金融商品に投資する個人を指します。機関投資家と対比される存在であり、違いは以下のとおりです。
個人投資家 | 自己資金で小規模投資を行う個人。多様な目的や知識レベルがある。 |
機関投資家 | 組織的に大規模投資を行う専門家集団。高度な分析力を持つ。 |
一般的に、個人投資家は投資以外に主な収入源を持っていることが多く、機関投資家と比較すると取引規模は小さいのが特徴です。
また、個人投資家は、機関投資家と異なるタイミングで株を売買する傾向があります。そのため、個人投資家と機関投資家の双方に株を持ってもらうことで、株価を安定させる効果を期待できます。
このような特性から、個人投資家は企業にとって重要なステークホルダーと言えるでしょう。
個人投資家は増加傾向にある
近年、個人投資家の数は着実に増加しています。2023年の個人株主数は、前年度より462万人増加して、約7,445万人と10年連続で増加しています。
この背景には、オンライン取引の普及や株価上昇への期待・老後の生活不安・NISA(少額投資非課税制度)の投資優遇制度の普及などが挙げられます。
個人投資家が増えることは企業にとってもポジティブな影響があります。市場の流動性が向上し、企業の株主構成が多様化することで、経営の安定性が高まるからです。そのため、個人投資家向けのIR活動をより重要視する必要性が高まっています。
なお、IRについてより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
▶ IRとは?意味や目的・業務内容についてわかりやすく解説
個人投資家向けのIR活動に取り組むべき理由
個人投資家向けのIR活動に取り組むべき理由は多岐にわたります。ここでは、その主な理由を4つ紹介します。
- 信頼関係を構築できる
- 企業イメージが向上する
- フィードバックを収集できる
- 出来高を作れる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 信頼関係を構築できる
IR活動は、企業と投資家間の信頼関係を構築するうえで重要な役割を果たします。
定期的に対話の機会を設けることで、長期的な信頼関係の構築につながります。このような取り組みは、安定的な株主基盤の形成につながるでしょう。
また、説明会や面談などの機会に直接的なコミュニケーションをとることで、企業の透明性と信頼性が向上します。結果として、企業の持続的成長をサポートする環境が整備されるでしょう。
個人投資家との信頼関係の構築は、企業の長期的な価値向上に不可欠な要素です。
2. 企業イメージが向上する
IR活動を通じて、企業の事業内容や社会的価値を投資家に効果的に伝えられます。
企業イメージの向上は、投資家からの支持獲得以外にも多くの利点があります。たとえば、優秀な人材の獲得や取引先との関係強化にもプラスの影響をもたらすでしょう。
そのため、IR情報を開示することはもちろん、社会貢献にかかわるCSR活動も積極的に紹介することが大切です。このような取り組みは、企業評判とブランド価値の向上につながります。
良好な企業イメージは、長期的に競争力を維持するうえで欠かせない要素と言えるでしょう。
3. フィードバックを収集できる
個人投資家向けのIR活動に取り組むと、市場の声を直接聴きとれます。説明会やアンケート・SNSなどさまざまな手段を通じて投資家の意見や要望を収集すれば、経営戦略の改善や新たな事業機会の発見につながるでしょう。
個人投資家目線の指摘から専門家とは異なる新鮮な気づきを得られることがあるため、盲点を見つけられれば、大きな改善につながる可能性があります。
4. 出来高を作れる
個人投資家向けのIR活動に取り組むことで、株式の出来高増加につながるでしょう。複数の個人投資家が株を購入すれば、市場での取引量が増え、株式の流動性が向上する効果が期待できます。
出来高を高めることは、株価の安定化や適正な価格形成につながる重要な要素です。
加えて、機関投資家の参入を促す効果もあります。機関投資家が投資対象に選ぶ企業は、一定の出来高が求められることがあり、基準に達していないと機関投資家に投資先として選出されにくい状況が続くでしょう。
その点、個人投資家から信頼を集めて出来高を増やせれば、機関投資家の投資対象先に選ばれる可能性を高められます。つまり、出来高を増やすことで、企業の株式市場における評価を安定させる効果が期待できるのです。
個人投資家に向けたIR施策
個人投資家に向けたIR施策について、3つの重要なポイントを紹介します。
- メディアの活用
- 説明会の開催
- IRサイトの作成
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. メディアの活用
個人投資家向けIR活動におけるメディア活用は不可欠です。今の時代は、X(旧Twitter)やYouTubeなどのプラットフォームで最新情報や経営者メッセージを直接届けられます。また、財務メディア(新聞や雑誌・オンライン出版物)との良好な関係性を構築することも大切です。
メディアを通じて企業評判を高め、より多くの投資家の関心を引き付けられます。また、プレスリリースや投資家向けプレゼンテーション・Webサイトなど、異なる媒体間で一貫したメッセージを維持することも意識しましょう。一貫性のあるメッセージを発信すれば、企業の信頼性向上につながります。
投資家を惹きつけるIR情報については、こちらの記事を参考にしてみてください。
▶ 【実例付き】投資家を惹きつける主なIR情報の内容8選
2. 説明会の開催
個人投資家向け説明会は、直接的なコミュニケーション機会として定期的に開催することが求められます。四半期ごとの決算説明会や年次投資家説明会を開催し、最新の財務情報や事業戦略を共有しましょう。
最近では、従来の対面式説明会に加え、ウェビナーやオンライン説明会を活用するケースが増えています。オンライン形式で説明会を開催すれば、時間や場所の制限がないため、より多くの投資家に情報を共有できます。
説明会のなかで、経営者が登壇する時間を設けることも大切です。経営者の言葉を直接聞くことで、投資家との信頼関係構築や企業ビジョン・戦略の理解促進につながります。
また、質疑応答のセッションを充実させると、投資家の声に耳を傾ける姿勢があると評価されるため、信頼感を醸成できます。丁寧な回答により双方向コミュニケーションを促進し、投資家の疑問や懸念に直接対応しましょう。
3. IRサイトの作成
IRサイトは、個人投資家とのコミュニケーションの中心となる重要な施策です。個人・機関にかかわらず、投資家に迅速かつ正確な情報を伝えるためには、サイトを充実させることが大切です。
IRサイトを作成する際は、以下のことを意識しましょう。
コンテンツの充実 | 財務や業績情報はもちろん、 ビジネスの内容や社会的な貢献度をアピールするコンテンツがあるとなお良い |
使いやすさ | IRサイトは情報量が多くなる傾向にあるので、 閲覧者が直感的に求めている情報にアクセスできるよう導線を整理する |
IRサイトへの導線は、メインサイトからIRへの明確なリンクを設置するケースが一般的です。なお、FAQセクションや用語解説を設け、投資経験の浅い個人投資家の理解を支援する工夫があると親切です。
個人投資家向けにIR施策に取り組む際のポイント
個人投資家向けにIR施策に取り組む際の重要なポイントを3つ紹介します。
- 開示資料を改善する
- 経営者の顔が見えるようにする
- 情報にアクセスしやすくする
ひとつずつ解説します。
1. 開示資料を改善する
個人投資家向けIR資料は、理解しやすさと透明性を重視して都度改善する必要があります。
改善ポイントは、以下のとおりです。
表現の改善 | 専門用語や複雑な財務用語の使用をできる限り避ける平易な言葉で説明する |
視覚的要素の活用 | グラフやチャートを効果的に使用する図解を用いて 複雑な情報をわかりやすく表現する |
開示資料の構成改善 | 最新の財務情報や重要なニュースを前面に配置する |
モバイル対応 | スマートフォンやタブレットでも 快適に閲覧できるデザインを採用する |
継続的な情報提供 | 定期的なニュースレターやメールマガジンを 発行する企業の最新情報や業界動向を簡潔にまとめて提供する |
開示資料の継続的な改善は、個人投資家とのコミュニケーション強化に不可欠です。
なお、弊社ストリームラインでは、資料制作のご依頼を承っています。IR資料の作成についてお困りの方は資料作成のワンストップ代行サービス「LEAD」までお気軽にご相談ください。
2. 経営者の顔が見えるようにする
IR活動において、経営者の「顔」が見えるようにすることは、投資家からの信頼を獲得するうえで大きな効果を期待できます。個人投資家向け説明会やオンラインセミナー・ウェビナーには、できる限り経営者が登壇する時間を設けると良いでしょう。
また、メディア露出を増やすことも効果的な戦略です。
- 経済メディアへの出演や寄稿
- 自社ウェブサイトでの経営者インタビュー掲載
- SNSを活用した経営者自身による情報発信
経営者の顔を出して対外的にアピールする際は、企業のビジョンや中長期戦略に関する経営者の考えを明確に伝える発信を意識しましょう。
このような取り組みにより、経営者の人柄や経営に対する熱意を直接伝えられます。経営者の「顔」が見えるIR活動は、個人投資家の長期的な支持を得るための重要な要素と言えるでしょう。
3. 情報にアクセスしやすくする
IR施策では、投資家が求めている情報へかんたんにアクセスできることが極めて重要です。具体的には、以下のような施策が挙げられます。
視覚的に見やすいデザインに 最適化する | IRサイトはスマホ画面でも見やすいようレスポンシブデザインの採用 |
情報の可視化を効果的に行う | インフォグラフィックスや動画の活用 |
デジタルプラットフォームを 積極的に活用する | SNSを利用した情報発信IRメールマガジンの提供オンライン説明会や ウェビナーの開催 |
このような施策により、個人投資家が必要な情報に容易にアクセスできる環境を整えます。結果として、投資家との良好な関係構築につながるでしょう。
個人投資家に向けたIR説明会資料の制作事例
ストリームラインは、個人投資家向けIR資料作成のエキスパートとして、お客様のニーズに寄り添ったサービスを提供しています。
最近の事例では、株式会社T&Dホールディングス様から個人投資家向け説明会資料の作成を担当しました。
お客様のご要望は、以下の2点です。
- 社内の各部署で作成した資料を、見やすいものに改善する
- 生命保険という専門性の高い内容を個人投資家にわかりやすく伝える
私たちは、資料を作成するにあたって、詳細をヒアリングしてお客様のビジネスと資料作成の目的を理解しました。次に、複数のデザイン案を提示し、お客様の理想とするイメージを引き出しました。
結果として、お客様からは「イメージ通りの資料が完成した」「スムーズなディレクションで助かった」という高い評価を頂いています。


このように、弊社ストリームラインでは資料制作のご依頼を承っています。IR資料の作成についてお困りの方は資料作成のワンストップ代行サービス「LEAD」までお気軽にご相談ください。
個人投資家に向けたIR施策はこれからの時代必須
個人投資家向けのIR施策は、企業の持続的成長に欠かせない取り組みです。メディアや説明会・IRサイトなど、多様なアプローチで個人投資家とのコミュニケーションを深めることが重要です。
情報へのアクセスしやすさや経営者の顔が見える取り組み・継続的なフィードバック収集と改善は、成功の鍵になります。このような施策を積極的に展開することで、企業価値の向上と安定した株主基盤の構築が可能です。
個人投資家との良好な関係は、長期的な企業成長の礎となるでしょう。
なお、弊社ストリームラインでは、資料制作のご依頼を承っています。IR資料の作成についてお困りの方は資料作成のワンストップ代行サービス「LEAD」までお気軽にご相談ください。
