【記入例】飲食店の事業計画書の書き方を解説!売上予測の立て方やテンプレートを紹介
飲食店を開業するには当然ながら開業資金が必要ですが、自己資金だけでは難しいため、融資などで資金調達をする場合も多いでしょう。
日本政策金融公庫の創業融資は創業時に利用しやすいですが、申し込む際に事業計画書の提出が必要です。本記事では飲食店の事業計画書の作成方法や含めるべき要素を詳しく解説します。
目次
・飲食店の事業計画書についての概要・【記入例あり】飲食店用事業計画書の書き方を徹底解説・飲食店の事業計画書を作る際の売上予測の立て方3ステップ・事業計画書のテンプレートをダウンロードできるサイト|日本政策金融公庫・飲食店の事業計画書を作るときに意識すべきポイント・説得力のある飲食店の事業計画書を作るなら数字の根拠を明確にしよう
飲食店の事業計画書についての概要
はじめに、飲食店の事業計画書を作成する目的や、スケジュール感について解説します。
飲食店を営業するうえで事業計画書を作成する目的
飲食店における事業計画書は、開業後の経営を安定させる指針になります。
事業計画書を作成するなかで、コンセプトやターゲット層・メニュー構成・価格戦略などを整理することで、経営方針に一貫性を見出せるでしょう。
そして、開業後に計画書を定期的に見直すことで、売上や費用の予測と実績の差を把握し、改善策を検討する指標として活用できます。
加えて、事業計画書は金融機関や投資家に対して、計画の実現可能性や収益見通しを示して信頼を得るためにも重要な書類です。
飲食店の事業計画書を作成するスケジュール
飲食店の事業計画書を作成する際は、開業の約3~6ヵ月前から準備を始めるのが理想です。
まず、初期段階では、店舗のコンセプトやターゲット像を明確にし、出店エリアの市場調査を行います。
この段階で得られた情報をもとに、予算規模や資金計画の骨子を立てましょう。
次に、物件契約やメニュー開発・仕入れ先の選定を進めながら、収支計画や人件費の見通しなどを詳細に盛り込んだ計画書を整えていきます。
その後、融資申請や補助金申請を行い、資金調達の見通しを確定させます。
最終段階では、開業準備の進捗を踏まえて計画内容を微調整し、実際の運営体制に即した最終版を完成させるという流れです。
以上はあくまで一例ですが、このようなスケジュール感で進めることで、開業時のリスクを減らし、スムーズな立ち上げを実現できるでしょう。
【記入例あり】飲食店用事業計画書の書き方を徹底解説
飲食店用の事業計画書を作成する際には、いくつかの重要な項目があります。ここでは、事業計画書に盛り込むべき9つの項目について詳しく紹介します。
- 創業の動機
- 経営者の略歴等
- 取扱商品・サービス
- 従業員
- 取引先・取引関係等
- 関連企業
- お借入の状況
- 必要な資金と調達方法
- 事業の見通し(月平均)
それぞれ詳しく見ていきましょう。
創業の動機

事業計画書における「創業の動機」は、なぜその飲食店を始めたいのかを端的に示す部分です。
単に「料理が好きだから」と書くのではなく、自分の経験や背景、そして今後実現したい思いを具体化すると説得力が増します。
たとえば、長年の飲食業界での経験によって培った調理スキルや接客の強み、または地元に不足している業態に挑戦したいという動機などは説得力があるでしょう。
また、将来どのように店を発展させたいのかという展望を添えると読み手に前向きなイメージを与えられます。
経営者の略歴等

「経営者の略歴等」では、自分がどのような人物で、飲食店を経営するうえでどのような強みを持っているのかを示します。
飲食業界での勤務経験や料理に関する資格・接客スキルなど、店舗運営に直結する経歴を中心にまとめるとよいでしょう。
また、マネジメントやアルバイトリーダーとしての経験、数字を管理した実績なども具体的に記載すると信頼性が高まります。
必ずしも華やかな経歴である必要はなく、飲食に携わるなかで身につけた地道なスキルや学びをアピールすることが大切です。
読み手が「この人なら計画を実現できる」と納得できるよう、自分の持ち味を具体的に伝えるとよいでしょう。
取扱商品・サービス

「取扱商品・サービス」では、その店で提供する料理や飲み物の内容、さらにはサービスの特徴を明確に示すことが求められます。
ただ「和食を提供する」と書くのではなく、どのような客層を想定し、何を強みとして提供するのかを具体的に記載すると伝わりやすくなります。
たとえば「地元食材を使った季節ごとの御膳」や「テイクアウト対応の健康志向メニュー」といった形で特色を表すとよいでしょう。
また、店内の雰囲気作りや接客スタイルなども、サービスの一部として盛り込むことで、単なる料理提供以上の価値を示せます。
従業員

「従業員」の欄では、店舗運営に必要な人員体制を示しましょう。
取引先・取引関係等

「取引先・取引関係等」には、食材や飲料の仕入れ先、業務用機材の提供元など、店舗運営を支える外部パートナーを記載します。
取引先との関係は、品質やコスト管理の基盤となるため、計画書の信頼性を高める要素です。
関連企業

「関連企業」の欄には、自身の店舗経営を支援する関連事業や提携関係にある企業について記載します。
たとえば、同じグループ内で運営している別業態の店舗がある場合や、知人が経営する食品加工会社から仕入れを行う場合などが該当します。
お借入の状況

「お借入の状況」では、既存の借入金や今後の資金調達予定を正確に記載しましょう。住宅ローンや車のローン・教育ローンなどを記入します。
月々の返済額や残債務額を記入し、新たに飲食店開業のための融資を受けても無理のない返済計画であることを証明しましょう。
必要な資金と調達方法

「必要な資金と調達方法」では、開業にかかる総費用を明確に示すことが重要です。物件取得費や内装費・厨房機器・仕入れ費用・広告宣伝費・運転資金などを具体的に分けて算出し、合計額を提示しましょう。
そのうえで、どの資金を自己資金でまかない、どの部分を融資や支援制度から調達するのかを整理して記載する必要があります。
事業の見通し(月平均)

「事業の見通し(月平均)」では、開業後にどの程度の売上や利益を見込むかを数字で示すことが求められます。
想定する客単価や1日の来客数・営業日数をもとに売上予測を算出し、そこから原価や人件費、家賃などを差し引いて利益を試算する流れが基本です。
また、初月から急激な利益を期待するのではなく、徐々に認知度を高めて売上を安定化させる計画を盛り込むと現実的で信頼性が増します。
たとえば「初年度は月商150万円を目標に、半年後には200万円規模に成長させる」といった形で、根拠のある数値を示すことが大切です。
現実的かつ具体的な見通しは、金融機関にとって返済能力を判断する判断材料となるでしょう。
飲食店の事業計画書を作る際の売上予測の立て方3ステップ
売上予測を立てることは、飲食店の事業計画書において重要な要素です。ここでは、売上予測を立てるための3つのステップを紹介します。
- 計算に必要な数値を見積もる
- 1日あたりの売上を計算する
- 月・年売上に積み上げる
各ステップについて詳しく説明します。
1. 計算に必要な数値を見積もる
飲食店の売上予測を立てるための第一ステップは、計算に必要となる数値の見積もりです。
主に押さえるべきは「客席数」「客単価」「回転率」であり、この3つの数値を根拠に売り上げを予測します。
| 数値 | 概要 |
|---|---|
| 客席数 | 店内で実際に用意できる席数。 |
| 客単価 | 来店客1人が注文する平均金額を具体的なメニュー構成から算出する。 |
| 回転率 | 1日または一定時間内に同じ席が何回使われるかを表す。 営業時間や客層によって調整が必要。 |
以上の数値を実際の店舗形態や立地条件・競合分析などから現実的に検討することが、計画に説得力を持たせるための重要なポイントです。
2. 1日あたりの売上を計算する
次に、1日あたりの売上を具体的に計算します。計算式は「1日の売上=客単価×客席数×回転数」です。
たとえば、20席の店で客単価が2,000円、回転数が1.5の場合、1日の売上は60,000円です。

このとき回転数は、同じ席に1日で何人が座るかを示す指標を指します。
ランチやディナー、平日や休日で数値が異なる場合は別々に計算して合算します。
テイクアウトの売上がある場合は「売上=客単価×来客数」で計算することも押さえておきましょう。
現実的な売上を見積もるには、理想値ではなく立地や提供商品に合った数値設定が欠かせません。
3. 月・年売上に積み上げる
1日あたりの売上を計算できたら、次はその数値を積み上げて月や年の売上予測を立てます。
月や年の売上は「1日の売上×営業日数」で算出できますが、営業日数は定休日やイベント・季節の変動を踏まえて設定することが大切です。
年間の売上を見積もる際は、繁忙期や閑散期を考慮して月ごとの予測を調整し、各月の売上を合計することで長期的な見通しを得られます。
売上増減の要因となる曜日や天候・イベントの有無など現実的な想定を盛り込みながら、過度に楽観的にならないよう数値を設定するのがポイントです。
事業計画書のテンプレートをダウンロードできるサイト|日本政策金融公庫
日本政策金融公庫の公式サイトでは、飲食店をはじめとした創業希望者向けに無料で使える事業計画書のテンプレートが提供されています。
このテンプレートは、PDFやExcelファイルでダウンロードできます。
項目ごとに記入例も掲載されており、はじめて作成する人でも手順を追いやすい構成になっているのが特徴です。
テンプレートを活用すれば、漏れなく計画書を作成できるだけでなく、求められる観点を自然に押さえられます。
飲食店の事業計画書を作るときに意識すべきポイント
事業計画書を作成する際には、いくつかの重要なポイントがあります。ここでは、とくに意識すべき5つのポイントを紹介します。
- 事業計画書を作る前に市場を調査する
- 店舗の強みを明確にする
- 数字を根拠にして計画に説得力を持たせる
詳しく見ていきましょう。
事業計画書を作る前に市場を調査する
飲食店の事業計画書を作成するうえで、市場調査は綿密に取り組む必要があります。
まずは、自店が参入する予定の地域で、どの層が多く来店する可能性があるのか、人口や年齢層・ライフスタイルを調べてターゲットを明確にすることが出発点です。
そのうえで、周辺の競合店の規模や営業時間・価格帯・客層、そして売れ筋商品まで分析し、自分の店が強みを発揮できる差別化ポイントを見つけます。
市場の規模やトレンド、地域のイベントや集客の仕組みなどもあわせて計画を練ることで、計画書に根拠ある数字や戦略を盛り込めるでしょう。
市場調査を徹底することが、事業計画の精度と説得力を高めるポイントです。
店舗の強みを明確にする
飲食店の事業計画書を作成する際は、自店の強みを具体的かつ明確に示しましょう。
たとえば、他店にはない独自のレシピや地元食材へのこだわり、何より経営者自身の特技や経験が活かせる分野があれば、そのことをアピールします。
コンセプトについても「おいしい料理」や「落ち着いた雰囲気」といった抽象的な表現で終わらせてはいけません。
「地元農家と直接契約した旬の野菜を使う」や「1人客でもくつろげるカウンター席を充実させる」など、読み手が明確にイメージできるレベルまで落とし込むことが大切です。
その強みがターゲットとなる顧客ニーズにどう応えるのか、競合店との差別化につながる根拠を説明できれば、説得力や信頼度を高められるでしょう。
数字を根拠にして計画に説得力を持たせる
事業計画書に説得力を持たせるためには、数字を根拠として計画を組み立てることが欠かせません。
売上見込みは「客単価×客席数×回転数」の計算式を使い、地域や業界の実際のデータを引用して現実的な数値を導き出します。
また、経費や利益計画も曖昧な予想ではなく、家賃や人件費・原材料費を細かく積み上げて収支バランスを明示する必要があります。
金融機関や支援機関は、数字の裏付けがある計画かどうかを厳しくチェックするため、競合店の売上水準や市場規模などから必要なデータを集めて根拠とすることが効果的です。
数字に一貫性を持たせることで、実現できる可能性が高い計画として評価されやすくなります。
説得力のある飲食店の事業計画書を作るなら数字の根拠を明確にしよう
説得力のある飲食店の事業計画書を作成するには、数字の根拠を明確に示すことがなにより重要です。
それぞれの数値には競合店のデータや立地条件、ターゲット層の分析結果など現実的な根拠を添えると説得力が増します。
経費や人員計画についても、家賃や人件費・原材料費などの具体的な試算を積み上げて説明し、数字の整合性を図ることが求められるでしょう。
このような客観的なデータや市場調査の結果をもとに計画を立てることで、読み手から「きちんと準備された計画」であると評価されやすくなります。


















