PERとは?計算式や目安・活用するときに注目すべきポイントをわかりやすく解説

営業活動や業績報告において、PER(株価収益率)は企業の財務状況を理解するための重要な指標です。
PERの基本を押さえることで、取引先企業の財務状況をより正確に把握でき、説得力のある提案や報告ができるようになります。
本記事では、営業担当者が実務で活用できるよう、PERの基礎知識から計算方法・分析時の注意点まで、わかりやすく解説します。
正しいPERの使い方を身につけて、数字に基づいた論理的な営業活動を実現しましょう。
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目次
・PERとは?概要をわかりやすく解説
・PERの計算式
・PERの目安
・PERに関連する指標
1. PBR
2. ROE
3. 株式益回り
・PERを活用するときに意識すべきポイント
1. 同業種・過去データと比較する
2. ほかの指標と組み合わせて分析する
3. 当期純利益を細かく分析する
4. 市場環境や経済状況を考慮する
5. 成長性や将来性を評価する
・PERは株価が割高か割安かを評価する指標
PERとは?概要をわかりやすく解説
PER(株価収益率)とは、株価が企業の利益に対して何倍の水準にあるかを示す指標です。
PERが高いほど、投資家はその企業の将来の成長に期待しているといえます。
基本的には、PERの値が大きければ割高、小さければ割安な株と判断されます。
PERは単体で判断するのではなく、企業の成長性や財務状態など他の指標と組み合わせて総合的に分析される指標であることを押さえておきましょう。
PERの計算式
PERの計算式は「PER = 株価 ÷ EPS(1株当たりの当期純利益)」です。

たとえば、株価が1,000円でEPSが50円の場合、PERは20倍(1,000円÷50円)になると計算できます。
この計算結果は、現在の利益水準が継続すると仮定した場合、投資金額を回収するのに20年かかることを表しています。
PERの数値が高いほど株価が割高・低いほど割安と判断されることを押さえておきましょう。
PERの目安
一般的にPERは15倍が目安とされ、15倍を上回れば割高、下回れば割安と考えられています。
なお、適正なPERの水準は業種によって異なります。業種ごとのPER目安は以下のとおりです。
▼2025年5月時点の業種別PER平均(プライム市場)
業種 | PER | 業種 | PER | 業種 | PER |
---|---|---|---|---|---|
1 水産・農林業 | 10.1 | 12 鉄鋼 | 8.8 | 23 空運業 | 10.6 |
2 鉱業 | 11.1 | 13 非鉄金属 | 79.3 | 24 倉庫・運輸関連業 | 16 |
3 建設業 | 15.4 | 14 金属製品 | 17.1 | 25 情報・通信業 | 24.9 |
4 食料品 | 19.1 | 15 機械 | 15.9 | 26 卸売業 | 12.6 |
5 繊維製品 | 20.5 | 16 電気機器 | 22.7 | 27 小売業 | 22 |
6 パルプ・紙 | 9.3 | 17 輸送用機器 | 14.9 | 28 銀行業 | 13.5 |
7 化学 | 17.5 | 18 精密機器 | 18.1 | 29 証券、商品先物取引業 | 13 |
8 医薬品 | 20.5 | 19 その他製品 | 14.4 | 30 保険業 | 15.5 |
9 石油・石炭製品 | 6.8 | 20 電気・ガス業 | 6.8 | 31 その他金融業 | 11.3 |
10 ゴム製品 | 11.3 | 21 陸運業 | 14.5 | 32 不動産業 | 13.4 |
11 ガラス・土石製品 | 18 | 22 海運業 | 7.5 | 33 サービス業 | 18.5 |
PERは、景気動向や金利環境によっても変動し、低金利時代には全体的にPERは高くなりやすい傾向があります。
投資判断の精度を高めるには、PERだけでなく、PBRやROEなど他の指標と組み合わせて総合的に企業価値を判断することが大切です。
PERに関連する指標
ここでは、PERに関連する重要な指標を3つ紹介します。
- PBR
- ROE
- 株式益回り
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. PBR
PBR(株価純資産倍率)は、企業の純資産に対する株価の割合を示す指標です。
計算式は「株価÷BPS(1株当たり純資産)」で、企業の解散価値に対して株価が何倍で取引されているかを表します。

PBRが1倍を下回る場合、理論上は企業の解散価値より安く株式を購入できることを意味します。
逆にPBRが高い企業は、将来の成長期待が大きいか無形資産の価値が高いと評価されているということです。
業種によって適正水準は異なり、製造業は設備投資が多いため低めに、IT企業は無形資産が多いため高めになる傾向があります。
PERが企業の収益力を評価するのに対し、PBRは企業の資産価値を評価する指標です。
2. ROE
ROE(Return On Equity)は自己資本利益率とも呼ばれ、企業が株主から預かった資金をどれだけ効率的に利益に変換できているかを示します。
ROEの計算式は「当期純利益÷自己資本×100」です。

たとえば、ROEが10%なら投資した資金100円に対して10円の利益を生み出したことを意味します。
一般的に、10%以上あれば優良企業とされますが、業種によって適正値は異なります。
ROEが高い企業は、少ない資本で多くの利益を上げており、株主にとって投資効率がよいと判断されやすくなるでしょう。
PERとの関係では、ROEが高い企業は将来の成長性も期待されるため、高いPERでも割高とはいえないケースがあります。
ただし、短期的な利益追求のために自社株買いで分母を減らしたり、過剰なリスクを取ったりする企業もあるため、ROEだけで企業価値を判断するのは避けましょう。
株式投資においては、ROEの水準だけでなく、持続性もあわせて分析することが重要です。
3. 株式益回り
株式益回りはPERの逆数であり、企業の収益力を表す指標です。
計算式は「1株当たり純利益(EPS)÷株価」で、結果は百分率(%)で表されます。

たとえば、PERが20倍の場合、株式益回りは5%(1÷20×100)となります。
株式益回りは、投資した資金に対して企業が生み出す利益の割合を示しており、株式益回りが高いほど、投資金額に対する収益性が高いと判断されるでしょう。
株式益回りを国債などほかの金融商品の利回りと比較し、投資すべきかどうかを判断できます。
たとえば、株式益回りが4%で国債利回りが1%なら、リスクを考慮しても株式投資の魅力が高いと判断できるでしょう。
ただし、高すぎる株式益回りは株価が極端に低くなっているケースもあります。この場合、市場が企業の将来性に不安を感じていることを示唆している可能性があることを押さえておきましょう。
PERを活用するときに意識すべきポイント
PERを活用する際の重要なポイントを理解することは、投資判断の精度を高めるうえで不可欠です。ここでは、注意すべき5つの要素を紹介します。
- 同業種・過去データと比較する
- ほかの指標と組み合わせて分析する
- 当期純利益を細かく分析する
- 市場環境や経済状況を考慮する
- 成長性や将来性を評価する
それぞれのポイントについて詳しく説明します。
1. 同業種・過去データと比較する
PERは、同業種や過去データと比較することではじめて企業価値の判断材料となる指標です。
たとえば、IT業界の平均PERが30倍の場合、ある企業のPERが20倍なら割安と判断できます。反対に、製造業の平均が15倍であるなか、ある企業が25倍なら割高の可能性があります。
各市場区分における業種別のPERは、以下のとおりです。
市場区分 | 上位5業種 | PER | 下位5業種 | PER |
---|---|---|---|---|
プライム市場 | 非鉄金属 | 79.3 | 石油・石炭製品 | 6.8 |
情報・通信業 | 24.9 | 電気・ガス業 | 6.8 | |
電気機器 | 22.7 | 海運業 | 7.5 | |
小売業 | 22 | 鉄鋼 | 8.8 | |
繊維製品 | 20.5 | パルプ・紙 | 9.3 | |
スタンダード市場 | 銀行業 | 60.2 | 鉱業 | 6 |
水産・農林業 | 20 | ガラス・土石製品 | 7.8 | |
小売業 | 18.7 | 輸送用機器 | 7.9 | |
情報・通信業 | 18.2 | 鉄鋼 | 8.3 | |
精密機器 | 17.5 | 陸運業 | 8.8 | |
グロース市場 | 機械 | 166.6 | 証券、商品先物取引業 | 6.7 |
情報・通信業 | 57.8 | 空運業 | 10.4 | |
金属製品 | 45.7 | 輸送用機器 | 17 | |
電気・ガス業 | 38.1 | 不動産業 | 18.3 | |
その他金融業 | 33.3 | 非鉄金属 | 18.7 |
業界によってPERの適正水準は大きく異なるため、自動車業界と成長中のIT企業のように別業種を単純比較してはいけません。
景気サイクルや企業の成長段階によってもPERの解釈は変わるため、複数の指標と組み合わせて分析する必要があります。
投資家は、PERという単一の数字だけでなく、企業の成長性や業界動向を含めた総合的な視点で判断することを押さえておきましょう。
2. ほかの指標と組み合わせて分析する
PERだけで企業の真の価値を見極めることは難しいため、複数の指標と併用して分析することが重要です。
たとえば、PBR(株価純資産倍率)と組み合わせることで、企業の資産価値と収益性の両面から評価できます。
また、ROE(自己資本利益率)と合わせて分析すれば、高PERの企業が本当に成長性があるのか、それとも一時的な要因なのかを判断できるでしょう。
さらに、過去数年間のPERの推移を確認すれば、現在の株価が割高か割安かを判断する材料になります。
このように、投資家はPERやほかの財務指標を多角的に分析して、投資先を判断しています。
3. 当期純利益を細かく分析する
PERを正確に理解するには、当期純利益の内容を詳細に分析することが重要です。
当期純利益には、一時的な特別利益や特別損失が含まれている場合があり、このような要素が数値を大きく歪めている可能性があります。
たとえば、不動産売却益や事業売却益などの一時的な利益が含まれていれば、実質的な収益力より当期純利益が膨らみ、PERは見かけ上低くなります。

反対に、災害損失や事業構造改革費用などの特別損失が計上されていれば、PERは実態より高くなるでしょう。

また、利益の質も重要で、本業からの安定した利益なのか為替差益などの不安定な利益なのかを見極める必要もあります。
PERを活用する際は、半期報告書や決算短信の注記事項を確認し、特別項目の内容と影響を把握することが大切です。
4. 市場環境や経済状況を考慮する
PERで企業を評価する際は、市場環境や経済状況などの要素も考慮しましょう。
金利上昇局面では、企業の資金調達コストが増加し、PERが全体的に低下する傾向があります。反対に、金利低下局面では、企業の成長期待が高まりPERが上昇しやすくなります。
また、不況期には企業業績の不確実性から、投資家はリスクを避け、PERが低下しやすくなることも押さえておきましょう。
業界全体のトレンドも重要で、成長産業と衰退産業では適正とされるPERの水準が異なります。
PERは単独の指標ではなく、常に経済全体の文脈のなかで分析・解釈することで、より正確な投資判断につながるでしょう。
5. 成長性や将来性を評価する
PERは、企業の成長性や将来性を評価する際にも役立つ指標です。
たとえば、テクノロジー企業は伝統的な製造業と比較して高いPER水準で取引されることは珍しくありません。
ただし、PERが高い企業は常によい投資先とは限らないことも押さえておきましょう。その高い評価に見合う成長を実現できなければ、株価は下落します。
企業の事業計画や市場シェア拡大の可能性・新製品開発状況などもあわせて分析すべきでしょう。
PERは単なる数値ではなく、市場が企業の将来に対して抱く期待値を表す指標として活用することが大切です。
PERは株価が割高か割安かを評価する指標
PER(株価収益率)は、株価が企業の収益力と比較して割高か割安かを判断するための重要な指標です。
一般的に、PERが低いほど割安、高いほど割高と判断されますが、業種や成長性によって適正水準は異なります。
また、PERだけで判断をするのではなく、PBRやROEなどほかの指標と組み合わせて考えることで、より正確に企業の状態を分析できるでしょう。