IR資料とは?IR資料の役割や企業の全貌が分かる資料の見方について解説
企業の情報を正確に把握し、投資判断やビジネス戦略を構築する上で欠かせないのがIR資料です。しかし、その内容や見方について正しく説明できるほどには理解できていないという方も多いかもしれません。本記事では、IR資料とは何か、なぜ重要なのか、そしてどのように見るべきかについて詳しく解説します。企業の全貌を知り、より賢い投資や企業価値を判断をするためのヒントが満載です。
目次
- ● IRとは?
- ● IR資料とは?
- ● IR資料の特長とその他資料との違い
- ● IR資料の役割
- ● 覚えておきたいIR関連用語集
- ● 企業の全貌が見えてくる、IR資料のかしこい見方
- ● まとめ
IRとは?
IRとはInvestor Relations(インベスターリレーションズ)の略語です。日本語では「投資家向け広報」などと訳されますが、通常はIRと表記され「アイアール」と読まれます。
企業が投資家や株主とのコミュニケーションを円滑に行うための活動を指し、企業が持つ情報を適切に伝え、透明性を確保することによって、投資家や株主の信頼を獲得し企業価値を高めることを目的としています。
IR資料とは?
IR(インベスターリレーションズ)資料とは、企業が投資家や株主、市場関係者などに対して企業情報や財務情報などを提供するための文書のことです。主なIR資料には、決算短信、有価証券報告書、株主総会資料などがあります。
これらの資料を開示することで、企業の経営状況や業績・将来の展望などを投資家や株主などの関係者、更には企業研究を目的とした就活生に至るまで幅広い層に分かりやすく示すことが出来、企業の価値や魅力を伝える重要なツールとなっています。
IR資料の特長とその他資料との違い
企業で社外向けに作成される資料としてまず思い浮かぶものと言えば、提案書やピッチ資料などの営業資料ではないでしょうか。ではそれら資料と、投資家や株主向けのIR資料とではどのような違いがあるのでしょうか。以下にその違いとIR資料の特長を3つ説明します。
1. 公式性と信頼性
営業資料は顧客の購買意欲を喚起する目的で作成されることが多いのに対し、IR資料は企業の公式な情報源であり、投資家や株主に提供される公式な文書です。企業は正確かつ適切な情報を提供することで投資家や株主の信頼を獲得し、市場に対して透明性を確保します。
またIR資料は定期的に更新され、公開される必要があります。企業の業績や戦略が変化するたびに、最新の情報が投資家に提供されることで、市場に対する信頼が維持されます。
2. 内容の焦点
営業資料が製品やサービスの特徴や利点、顧客の成功事例などに焦点を当てるのに対し、IR資料は主に企業の財務情報や事業戦略、将来展望に焦点を当てています。これには市場動向、競合状況なども含まれます。投資家は企業の将来性を評価するために、これらの情報を重視します。
3. 投資家や株主への配慮
営業資料が顧客や市場全体に向けて情報を提供する目的を持つのに対し、IR資料は投資家や株主に企業の状況や展望を明確に伝えることを目的とします。
投資家や株主は情報を迅速に理解するために、わかりやすい言葉や整理されたレイアウトの資料を好みます。そのためIR資料では図解やグラフ・表などを使用し、専門用語や財務情報を分かりやすく説明する工夫がなされています。
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IR資料の役割
IR資料は、企業と投資家や株主との間で重要な情報のやり取りを可能にし、投資判断や企業価値の向上に貢献します。次に、IR資料の主な役割を3つ説明します。
1. 投資家とのコミュニケーション
IR資料の提供により、企業と投資家とのコミュニケーションが円滑になります。投資家は企業の情報を正確に把握することで、投資判断を行う上での信頼感を得ることが出来ます。
2. 企業の透明性向上
IR資料の提供により、企業の透明性を高めることが出来ます。財務情報や業績報告などの公開によって、企業の経営状況や戦略が投資家や株主に対して明確になり、信頼関係が築かれます。
3. 投資判断の支援
IR資料は投資家や株主が企業の経営状況を理解し、投資判断を行うための重要な情報源となります。決算資料や業績報告書などを通じて企業の財務健全性や成長戦略を評価することが出来、投資先を選定する際の指標となります。
これらの役割を果たすことで、IR資料は企業と投資家との間で相互の理解を深め、健全な投資環境の構築に貢献することが出来ます。
覚えておきたいIR関連用語集
IR資料には様々な用語が出てきます。「売上」・「利益」など、なんとなく言葉の意味が理解できるものもあれば、知らなければ全く分からない用語もあります。ここでは、IR資料を読み解くうえで必要な用語を重要なものから5つに絞って説明します。
① EPS(一株当たり利益)
EPS(Earnings Per Share)は、企業が1株あたりどれだけの利益を上げたかを示す指標です。投資家は企業の収益性を判断する際にEPSを参考にします。
② PER(株価収益率)
PER(Price Earnings Ratio)は、株価を企業のEPS(一株当たり利益)で割った値です。投資家はこの比率を通じて、株価が適正かどうかを判断します。
③ ROE(自己資本利益率)
ROE(Return On Equity)は、企業が自己資本でどれだけの利益を上げたかを示す指標です。ROEが高いほど企業の収益性が高いと見なされます。
④ EBITDA(利息・税金・償却前利益)
EBITDA(Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization)は、企業の営業利益を示す指標で、利息や税金、償却費用を除いたものです。企業の業績を評価する際に参考にされます。
⑤ キャッシュフロー
キャッシュ(現金)フロー(流れ)は、企業が現金として受け取ったり支払ったりする金額の総計です。投資家はキャッシュフローを通じて企業の財務健全性を評価します。
企業の全貌が見えてくる、IR資料のかしこい見方
ここまでIR資料とは何なのか、その特長と役割を説明してきました。とはいえ、一口にIR資料と言っても企業によって開示資料は多岐にわたります。ここからは実際にIR資料を見る際、これだけは確認しておきたい見るべき箇所を、視点を変えてそれぞれ3つずつ解説していきます。
1. 絶対におさえたい見るべき【情報】3つ!
IR資料を見る際には、以下の情報を重点的に確認することが重要です。このことをまず頭に入れて、IR資料を読み解いていきましょう。
① 財務情報
決算短信や有価証券報告書に記載されている財務情報を確認し、企業のお金の状況を把握します。
② 経営戦略
企業の経営方針や将来の展望を理解し、企業の将来性を考えます。
③ リスク要因
企業が直面しているリスク要因を把握し、投資判断におけるリスク管理を行います。
2. 絶対におさえたい見るべき【用語】3つ!
次に具体的にどの用語が重要なのか、またその用語が出てくる資料はどれなのか、これも重要な順に3つ説明します。
① 売上高(Sales Revenue)
売上高は企業が一定期間内に商品やサービスの売上で得た収入の総額を示します。企業の業績や成長性を把握する上で最も基本的な指標です。
|IR資料|決算短信の「売上高」の項目で確認できます。
② 営業利益(Operating Profit)
営業利益は企業の営業活動によって得られた利益を示します。営業によって得られた利益を把握することで、企業のコアビジネスの収益性を理解することができます。
|IR資料|決算短信の「営業利益」の項目で確認できます。
③ 純利益(Net Profit)
純利益は企業が税金やその他の経費を除いた利益を示します。企業の実質的な収益や利益率を把握するための重要な指標です。
|IR資料|決算短信の「当期純利益」の項目で確認できます。
3. 絶対におさえたい見るべき【資料】3つ!
絶対に見るべき用語3つ、結果としては全て決算短信に載っていることがお分かりいただけたでしょうか。
決算短信は企業が定期的に公表する重要なIR情報の一つであり、多くの主要な数値情報を含んでいます。しかし決算短信だけを読んでおけば全ての主要なIR情報が網羅されるとは限りません。総合的な企業理解や投資判断を行うためには、情報だけでなく非情報も含めて複数の情報源を総合的に分析することが必要です。
ここでは、これだけは読んでおきたいIR資料として、重要なものを3つ解説します。見るべきポイント、見る目的も併せてお伝えしますのでIR資料を読み解く参考にしてみてください。
① 決算短信
企業の四半期ごとの業績や財務情報をまとめた資料。
- |見るべきポイント|
- ・売上高や利益、キャッシュフローなどの財務指標の推移を確認する。
- ・前年同期との比較や、前四半期との比較を行い、企業の業績の推移を把握する。
- |なぜ見るのか?|
- 企業の四半期ごとの業績や財務状況を把握し、投資判断やポートフォリオ(運用商品の構成内容)の調整を行うために参照する。
② 有価証券報告書
企業の年次の業績や財務情報、経営方針などが記載された報告書。
- |見るべきポイント|
- ・貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書などの財務諸表を詳細に分析する。
- ・経営方針やリスクファクター、将来の展望などを理解する。
- |なぜ見るのか?|
- 企業の年次の業績や財務状況、経営方針などを総合的に把握し、投資判断やポートフォリオ(運用商品の構成内容)の戦略を構築するために参照する。企業の状況や将来性を評価するために必要。
③ ESG報告書
企業が環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の各側面での取り組みや成果を開示する資料。
- |見るべきポイント|
- ・環境、社会、ガバナンスの観点から企業の持続可能な経営を評価する。
- ・環境への取り組みや社会的責任の実践、統治構造の透明性などを確認する。
- |なぜ見るのか|
- 企業の持続可能性や社会的責任の実践状況を把握し、投資先としての企業価値を総合的に評価するために参照する。近年、投資判断にESGの観点を重視する「ESG投資」が広まっている。
まとめ
いかがだったでしょうか。いままでぼんやりと理解していたIRについての基本が、この記事によって少しでもクリアになっていれば嬉しいです。
企業のIR資料はコーポレートサイトの「IR」・「投資家情報」などのページで確認することが出来ます。今回それぞれ3つに絞って解説していきましたが、記載しなかったIR資料にも沢山の企業情報が詰まっています。読むべきポイントをしっかりおさえることが出来れば、会社概要だけでは知りえなかった企業の全貌が見えてくるでしょう。
もっと深くIR資料について知りたい方、手始めにいろんな企業のIR資料を読んでみたいがどの企業を選べばよいか迷う方は、ぜひこちらも参考にしてみてください。
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